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【ちょっと役立つ 日本の新製品】「球状歯車」でスムーズな動きを実現
種々の製造設備やロボット技術の分野で基礎となるものの一つに、機械の作業部を自由に曲げたり、回転・伸縮する腕を稼働する「歯車」があります。回転運動と直線運動の変換、運動の速度や主軸の変換も行うわけですが、従来の技術では「人の関節」のような広角度の動きは、単一の歯車では実現できません。
これまで、ロボットの関節を動かす場合、複数の円盤や円柱型の歯車を組み合わせる必要がありました。しかし、構造が複雑になり、動きも必ずしもスムーズではありませんでした。X、Y、Z軸を自由に回転させられ、構造がシンプルな「歯車構造」が望まれているのです。しかも、運動力を効率よく伝達しなければなりません。
軽量・小型化が必須なので、素材もスチールや非鉄金属、樹脂、持続可能性のあるバイオ素材などを、潤滑剤をも含めて、適材適所の用途のために長い間、研究されてきたのですが、ここに来て、考えられたのが、「球状歯車」と言われるものなのです。
球の全周に歯車を付けたもので、X、Y、Z軸を自由に回転させることができるのです。東北大学と山形大学の共同研究開発で、アルミ合金製の試作品が写真に示されています。
ロボットも機能毎のものを複数組み合わせて協働させ、単一ではなく、連続した複雑な作業を行うことが望まれています。
この研究が公表された時には大きな反響を引き起こしました。国内外で、3Dプリンターを使って「球状歯車」の作成に挑戦する動きが出たのです。球状歯車機構を組み込んだアクチュエータ(例えば、球面モーター)は、ロボットアームの関節部分や、ドローン用カメラの画面揺れ防止に使うジンバル機構などに応用され始めています。
球状歯車の「球面モーター」は小型・軽量で、動力伝達効率が高いので、応用範囲は広大です。多くのメーカーが興味を示しており、種々の機能を持つ試作品が出現してくると予想されます。
ただ、基本的な部品機構なので、我々の目に見えるような形で、表面に出ることは少ないかもしれません。
現在、兼松が量産を目指した体制を始めたようです。商社なので、色々な応用分野を考えているようです。
画像:東北大学多田隅研究室のウエブサイトより
No.337
となりのおじさん
在米35年。生活に密着した科学技術の最新応用に興味を持つ。コラムへのコメントは、 [email protected]まで
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