和食の調理でよく使う調味料に「塩」と「日本酒」があります。今回は酒蔵が開発した新しい調味料をご紹介します。
山形県酒田では多くの蔵元があり、いずれもが新型コロナウイルス渦での外食産業への規制(営業自粛、酒類提供自粛など)の影響を受け、大幅な売り上げの減少で、苦境に立ちました。そこでなんとか支援できないかと、地元の塩メーカー「さかたの塩」が、吟醸酒や古酒で味付けをした個性的な清酒塩「トラとゲコ」なるものを開発しました。商品名やパッケージは、地元山形の東北芸術工科大学の学生が考案した斬新なものになっています。
この塩メーカーでは、過去に日本酒の製造工程でタンクの底にたまる「酒粕」を使って、「酒粕塩」を作って好評を得たことがあります。今回はこの技術をいかして、日本酒そのものを使った「味付け塩」を開発に至りました。この塩メーカーの社長さんは調理師の資格もあり、和食調理の基本調味料である二つの成分の合成商品なら蔵元の支援もでき、調理する人も大いに便利になると考えたそうです。
海水を煮詰め、水分が蒸発して結晶化する直前に吟醸酒や古酒を加え、日本酒のほのかな香りと風味をまとわせたのです。塩は鮮やかなクリーム色や茶色に変わり、彩のバリエーションも増えたとか。
料理に使う塩を少し減らし、ひと振り清酒塩をかけると味がぐんと引き立つそうで、肉料理や刺身だけでなく、天ぷらやフルーツなどとも相性がよいそうです。
学生が考えた商品名は、酒好きの人を表す「トラ」(虎)と、酒が苦手な「ゲコ」(下戸)を掛け合わせた造語です。鳥海山の伏流水が多くの養分やミネラルを含んでおり、これを使って多くの蔵元がそれぞれ個性的な日本酒を手がけてきており、いずれこれらの蔵元ごとの個性あふれる「清酒塩」を作りたいとの夢を持っています。
「トラとゲコ」は吟醸塩、酒粕塩、古酒塩の3種のセット(3グラム入り、計3袋)で、440円で売られています。また、瓶詰め25グラム入りの3種セットが2100円で、道の駅や土産物店で販売されているほか、インターネットでも購入できるそうです。
No.308
となりのおじさん
在米35年。生活に密着した科学技術の最新応用に興味を持つ。コラムへのコメントは、 [email protected]まで
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