秋のセントラルパーク
ここのところ秋晴れの爽やかな青空が広がってるニューヨーク。これからやってくる、ながくて寒い冬をまえに、お天気のいい日はここぞとばかりに、大勢のひとたちがレストランのテラス席で食事やドリンクを楽しんでいる。
私たち夫婦も例外ではなく、スタジオに籠っての創作を一旦休憩して、秋のセントラルパークへと向かった。週末のセントラルパークはひと人人! コロナなどまるでなかったかのように、いつもに近い光景が広がっていた。広い芝生のうえには家族連れや友人たち、ひとりでくつろいでいるひとたち。思い思いの時間を過ごしている。驚いたことに、たくさんの観光客の姿も目立つようになってきた。
3月の自粛からガラガラだったセントラルパークに、観光客を乗せた馬車がパカパカと軽快なリズムを刻みながら落ち葉の道を優雅に駈けていく姿。いつものセントラルパークの音だ! 聞き慣れたその、なつかしい馬の蹄の音を聴きながらベンチに腰掛けていると、遠くから、流れるようなトランペットの音色が風にのって届いた。
ああ…、! このトランペット! 見覚えのあるやさしくて力強い音色。友人のRyoさんに違いない。なんとも心地のよいその音色に引き寄せられるかのように音を頼りに彼を捜す。
一段と音が大きくなってきた方へと目をやってみるとそこには、人だかりができていて、その奥にRyoさん率いるJazzバンドが演奏しているのが見えた。長い自粛を乗り越えて、帰ってきたんだ。毎週末、セントラルパークで演奏していた友人のRyoさんがまた、再び演奏しているその姿を見て涙がこぼれそうになった。
大勢の人に交じって彼のトランペットを聴いていると、心の大事な部分がじんわりじんわりとやわらかくなって心がゆるゆる。コロナでのロックダウンを乗り越えたあとの生の音はこれほどまで心をとらえるのか。いままで味わったことのないほどの繊細で深い部分が刺激された感覚だった。
生に触れるということがこんなにもすばらしい経験だったなんてコロナまえは、知っていたようで分かっていなかったように思う。
いま、世界中で巻き起こっている深刻な状況下において、ふつうの瞬間が、どれだけかけがえのないことであり、奇跡の連続であるということを日々気づかせてもらえる。
闇の中にある光。どれだけその光をみつけることができるか、そして、そこに感謝できるかが、新しい日常を過ごしていく秘訣なのではないだろうか。闇に飲み込まれそうになるたびに、光の存在が目の前に現れる。今日も、いま、この瞬間を生かされていることがどれだけありがたいことなのだろう。
人生は、奇跡の連続。今日も1日、ありがとう。
私の旅ストーリー
大森 千寿
NY在住。香川県高松市生まれ。アーティスト・作家・アートセラピスト・米国NLP協会認定マスタープラクティショナー・現代レイキマスター。NY・ハワイ・日本の3箇所にアートスタジオを構え活動。著書に、amazon電子書籍「ハワイに不動産を購入して人生10倍楽しむ方法」「ハワイで聞いた! 32通りの生き方(第一弾)」「人生の冒険」がある。NYで新しい扉を開く2日間プログラムやニューヨーカーと行く穴場ツアー、アート最前線ガイドなど開催中。 www.chizuomori.com ameblo.jp/adamwestonart
シェアする