9.11
気づけばはや9月も半ばを迎えようとしている。朝晩、涼しさが増しているここニューヨーク。日が暮れるのも速くなり、夏の終わりを感じるなか、せめて少しでも夏の名残を味わおうと、自宅アパートのバルコニーでひとり呑み。茜色に染まる夕陽をながめながら好きな音楽を聴いて過ごす。そんな時間が、いまのわたしにとって極上時間だ。
茜色がどんどん深まりをみせ、夜の世界へと切り替わるころ。マンハッタンの街にキラキラと光が浮かんでくる。そんな儚い時間の移ろいを楽しんでいるなか、ふと、遠くに見える1本の光の柱を見つけた。
一瞬、なにかわからなかったけれどその光がワールドトレードセンター付近から出ていることが分かった瞬間、理解ができた。そうだ、今年もこの時期がやってきたのだと…。
9.11。アメリカ同時多発テロ事件から19年の歳月が経つ。あの日。本当ならマンハッタンにいたはずだった。しかしその直前、急遽、予約を変更して日本へと帰っていた。テロから数週間が過ぎても、大変な衝撃の収まらない中、「NYへ戻りたい」そうまわりの友人知人にはなしをしたとき、みんなに大反対されたことを思い出す。
NYで学生だったわたしは、家族がNYにいるわけでもなく、大事なお仕事があるわけでもない。どうしてこの緊急事態のなかわざわざNYへ向かう必要があるのか。冷静に考えると、いまとなっては友人知人が心配してくれたことが理解できる。しかし、突き動かされる感情に従いテロから約3週間後。JFK行きの飛行機に飛び乗った。
あのとき。日本滞在中にいいお仕事のオファーもいただいた。正直、頭で考えるとNYへ戻ることを諦めようかと思うこともあった。しかし、結局は、心の声に100%従った。
じぶんにとって、大きな人生の分かれ道だったように思う。もしも、あのとき。気持ちにふたをして、NYに戻ることをしていなかったなら…。陶芸やアートの道に進んでいなかっただろう。そして、夫アダムにも出会えていなかった。それに、いままわりにいてくださっている友人たちにも、もちろん出会えていない。
失われたたくさんの尊いいのち。大切なひとを失ったひとたち。ニューヨークを去ったひとたち。人生観が変わったひとたち…。911は多くの人たちの人生を一瞬にして変えた。
ヘリコプターがせわしなく舞うマンハッタンの夜空に、突如として現れた光の柱。天にまっすぐ伸びた力強い光。魂の光。その、崇高な青白い光の柱をみつめながら、今、ここに生かされている奇跡にただただ感謝する気持ちがわいてきた。
この奇跡の人生。わたしは、これからも妥協せず、おもいっきり生きていきたい。
今日もありがとうありがとう。
私の旅ストーリー
大森 千寿
NY在住。香川県高松市生まれ。アーティスト・作家・アートセラピスト・米国NLP協会認定マスタープラクティショナー・現代レイキマスター。NY・ハワイ・日本の3箇所にアートスタジオを構え活動。著書に、amazon電子書籍「ハワイに不動産を購入して人生10倍楽しむ方法」「ハワイで聞いた! 32通りの生き方(第一弾)」「人生の冒険」がある。NYで新しい扉を開く2日間プログラムやニューヨーカーと行く穴場ツアー、アート最前線ガイドなど開催中。 www.chizuomori.com ameblo.jp/adamwestonart