満月とストーム
満月の日に大きなストームがニューヨークにやってきた。前日からストームがニューヨークを通過することは、あらかじめわかっていたため、市からの警告もはやく、わたしたち市民は準備をして待ち構えていた。いま、屋外テラス席でのみ営業を許されているレストランは、毎回、その日の天候によって先が見えずに大変だなと思う。
ストームがやってきた前日の夕方。すぐ横のお部屋に暮らすお隣さんも、下の階の隣人さんも、多くのひとたちがバルコニーへでて、植木や家具などが飛ばされないようにストームに備えて準備をしていた。そんなななか、ビーチハウスへバケーションに出かけている友人から連絡が。
「バルコニーのイスが気になる。大丈夫かなあ。飛ばないかなあ。」 まわりの仲良しの友人たちは、お互いに合鍵をもっている。留守中やバケーション中、なにかあればお互いがアパートへ出向けるように。
友人は、合鍵をもっているわたしに意見を求めてきたが、わたしにもストームによってどうなるかなんてわかる由もない。飛ばされたあとにどうこういっても始まらない。念には念をということでさっそく、近所の友人宅へと向かい、バルコニーにあった家具を部屋の中へと避難させた。
新型コロナで、準備もないままロックダウンがはじまり、その後、数ヶ月以上ものあいだまったく会えていない友人。今回はバケーションへ出かけて本人不在。そんな彼女不在の中でわたしひとりが彼女のアパートへでかけるというのは、なんとも不思議な感覚。
ストームは思っていたよりもはやくニューヨークからそれてくれた。そのおかげで、みれないと思っていた大きな大きな満月のお月様が昇ってくるところを、眺めることができた。ストームのおかげで、一斉に大気中のよごれも掃除されたのか、空気がきらきらと澄んで、空にはふだん見られない土星と木星までもが煌々と輝いていた。
いま、わたしたちが経験している想像を超える非常事態も、このストームのように、通り過ぎた後は澄んだクリアな世界が広がっているのだろうか。
ストームが激しければ激しいほど、大浄化されエネルギーがかわるように、今回のコロナでわたしたちの生きているこの世界も、いままで以上に、愛にあふれ、調和と平和な日々がきっと訪れるはず。いや、訪れてほしい。
マンハッタンの街を閑かに、黄金色に染めていく満月のひかりを浴びながら、そんなことを心に想った。
私の旅ストーリー No.206
大森 千寿
NY在住。香川県高松市生まれ。アーティスト・作家・アートセラピスト・米国NLP協会認定マスタープラクティショナー・現代レイキマスター。NY・ハワイ・日本の3箇所にアートスタジオを構え活動。著書に、amazon電子書籍「ハワイに不動産を購入して人生10倍楽しむ方法」「ハワイで聞いた! 32通りの生き方(第一弾)」「人生の冒険」がある。NYで新しい扉を開く2日間プログラムやニューヨーカーと行く穴場ツアー、アート最前線ガイドなど開催中。 www.chizuomori.com ameblo.jp/adamwestonart