北海道の大地から
連日、秋のような涼しい気候がつづいているここニューヨーク。いつの間にか夏が終わってしまったのではないかと錯覚してしまうほど夏の気配がしない。メイン州で暮らす友人は、夕方すでに寒くなってきていると言っていた。時が移り変わるのはとても早い。
わたしが創作スタジオを構えているビルは、マンハッタンで昔から続くお花の問屋街にある。ニューヨークも劇的な復活途中で、ホテルやパーティーでのお花の飾り付けのお仕事がずいぶん戻ってきているという。そのため、連日、フローリストたちがお花を求めて花問屋街は、大量のお花たちが飛ぶように売れていく。スタジオへ向かう道中は、至福の時。色とりどりのお花が、生命が、イキイキして迎えてくれる。
先日、お店の前に無造作に積まれていた箱の山にふと目がとまった。日本語が記されていたからだ。近寄ってよくみてみると、そこには「北海道の大地から」と書かれていた。
はるばる北海道から! 生のお花がニューヨークに。
数ヶ月前も、大分、岡山の箱を花問屋街でみかけたが、コロナで世界が大変ななか、美しいお花を咲かせて海を渡ってよくやってきたとおもうと、愛おしさがこみ上げてきた。
北海道の大地からやってきたお花たちに会いたい衝動に駆られ、空き箱の置いてあったお店の中に入った。店員さんに訊ねると、もう売り切れてしまったという。日本からのお花は高級で値が張るけれどフローリストたちに大人気ですぐに完売するそうだ。わたしも日本の出身で、外にある日本からの空き箱を見てお花が見たくなったことを告げてみた。
「ちょっと待ってて!」そういって、奥へいき大きな箱を両手にかかえて戻ってきた。箱には、日本語で欄と記載が。その他も、トルコキキョウやバラや日本から輸入でニューヨークの花問屋にやってきているといって、見せてくれた。
思いがけず出逢えた日本からやってきた生花たちに、とても感動した。お花を育てらている生産者さんたち、お花が育つまでに必要な関係者のみなさん、輸出を手伝っている関係者さんたち……1本のお花の背景には途方もないほどの大勢の人たちが関わっていて、たくさんの方の思いが隠れている。
北海道の大地から届いた空き箱。その背景にある世界を想像すると感謝の気持ちがあふれてきた。以前のように自由に旅ができなくなっている今だけど、世界はちゃんとつながってる。
日本からのお花たち、世界からのお花たち。今日も、美しいお花を咲かせてニューヨーカーを笑顔にし、元気をくれ、楽しませてくれてありがとう。
私の旅ストーリー
大森 千寿
NY在住。香川県高松市生まれ。アーティスト・作家・アートセラピスト・米国NLP協会認定マスタープラクティショナー・現代レイキマスター。NY・ハワイ・日本の3箇所にアートスタジオを構え活動。著書に、amazon電子書籍「ハワイに不動産を購入して人生10倍楽しむ方法」「ハワイで聞いた! 32通りの生き方(第一弾)」「人生の冒険」がある。NYで新しい扉を開く2日間プログラムやニューヨーカーと行く穴場ツアー、アート最前線ガイドなど開催中。 www.chizuomori.com ameblo.jp/adamwestonart
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