新しい日常
世界があっけなく新しい日常を迎えはや、半年近くが経った。ここニューヨークは、数ヶ月前の緊迫した状況を抜け出し、いま、また人や経済が少しずつ再起動をはじめている。しかし、いまは夏本番。多くのニューヨーカーたちは、バケーションでマンハッタンを離れていて、友人たちも例外ではなく街はいつもの夏とおなじように閑かだ。
ニューヨーカーたちが行く人気のバケーションは、お隣ニュージャージー州の海沿いのバケーションハウスだったり、ファイヤーアイランドといって、マンハッタンから気軽に行けるビーチハウスだったり、ハンプトンやマンハッタンから北へ郊外へ数時間いったアップステートだったり。
例年だとどこかへ出かけるわたしたち夫婦は今年、バケーションへ出かけないと決めた。それは、絵画のコミッションのオーダーをたくさんいただいているから。そして、いまのマンハッタンが閑かで過ごしやすいことも理由の一つかもしれない。
バケーションへ行かなくても、朝になると鳥の鳴き声で目覚め、朝日が差し込んでくる。日中はカモメが飛び交い、黄昏時にはマンハッタンの街が光と影のみごとなハーモニーを生み出す。そして、そのうち、あたりが暗くなってくるにつれ、月あかりが部屋を照らすようになる。
いまのアパートに引越して1年半。普段はいつも忙しくしていたこともあり、これほどまで自然とともに暮らせていることにまったく気づかずにいた。大都会で自然を身近に感じ、ともに暮らせることができるなんて、そんなことはできないはずだと、どこか勝手に決めつけていたのかもしれない。
決めつけていると、なにごともそれ以上は見えてこない。じぶんで勝手に遮断しているから。そう、すべてはじぶんが観たいものをみて、感じたいことを感じているんだと気づかされた。
制限をつくっているのも、締め付けているのも、じつは、環境ではなくじぶんなのだ。そうか、それなら、意図的に解放していけばいい。軽やかに。じぶんが本当に望む生き方へシフトしていく。
新しい日常がはじまっているいま、じぶんのなかの小さな視点から少し離れ、地球からの視点、さらには宇宙からの視点と、視点の距離をどんどん広げていく。そんなイメージを膨らませていくと、まだまだ柔軟に、これからの人生でやりたいことはたくさんあるということを想い出すことができた。
新しい日常と仲良くなる。目に見えない敵と戦うのではなく、共存していく。
「2020」は、未知なる道を行く旅への、出発の年。目の前に果てしなく広がる、抜けるような青空。そのどこまでもつづく青空を眺めながら、無限の可能性を感じ、心弾んだ。
私の旅ストーリー No.205
大森 千寿
NY在住。香川県高松市生まれ。アーティスト・作家・アートセラピスト・米国NLP協会認定マスタープラクティショナー・現代レイキマスター。NY・ハワイ・日本の3箇所にアートスタジオを構え活動。著書に、amazon電子書籍「ハワイに不動産を購入して人生10倍楽しむ方法」「ハワイで聞いた! 32通りの生き方(第一弾)」「人生の冒険」がある。NYで新しい扉を開く2日間プログラムやニューヨーカーと行く穴場ツアー、アート最前線ガイドなど開催中。 www.chizuomori.com ameblo.jp/adamwestonart