大都会の大自然
香川県の自然に囲まれた場所で、わたしは生まれ育った。自宅から車で10分ほど走れば海があり、窓を開けると、海の潮の香りがふんわりとただよってくる。身近に海があり、山があること。空を見上げると果てしない大空が続いていることが、日常の一部であり、そんな環境をあたりまえのように思って生活をしてきたように思う。
高校では、オレゴン州にあるハイスクールへ転入した。そこは、壮大なるスケールで永遠と広がる大自然。隣の家まで車で30分。ハイスクールから帰ると友人宅へ遊びに行き、彼女の自宅裏の森を、馬に乗っておしゃべりしながらふたりで一緒にお散歩するのがたのしみだった。
大人になってからも、しばらくハワイで暮らしていたときは、ほぼ毎日のようにビーチまでいき、海に沈む夕陽をながめて1日を終えていた。
そんな日々から一転、ニューヨークのマンハッタンという大都会暮らしがスタートした。マンハッタン暮らしでは星もみえず大好きな海も、ふるさと香川のように車で10分走ればたどり着くような場所ではない。空を見あげても超高層ビルに囲まれたマンハッタンの狭い空。そして、太陽の光さえもなかなか感じることができないような、大都会の高層ビルに囲まれた人工ジャングル。そんな意識が一気に変わったのが、今回の新型コロナでのロックダウンだった。
いままで、日中は陶芸の創作で工房に籠もりっきりの生活だった。しかし、工房も閉鎖され、1日を自宅で過ごすことを余儀なくされた。おかげで、自宅バルコニーから空を見上げる時間が増えた。今までなぜ気づかなかったのだろうか。目の前にはダイナミックに広がる大空、そして鷹までもがマンハッタンの空を優雅に舞っている。
ロックダウンになり、車、飛行機、人々、様々な流れが強制ストップされたなか、空気が澄んだおかげできらめく星空。そして、煌々と輝くお月様の光。先日は突然の大雨で街のいたるところで雷が落ち、空には青白い稲妻が幾度となく走った。自宅からその光景をながめながら、大自然のパワーを心底味わった。
ロックダウンがあって自然とのつながりを再び、手に入れることができた。今まで、目の前で繰り広げられていた奇跡の瞬間を、なんど気づかずにやり過ごしてきたのだろう…。
大都会にいても、大自然を味わうことはできる。地球上で生きている限り、いま、この瞬間をも、自然とともに生かされているのだ。戸惑うことや、なくしたものたくさんあった。しかし、この期間で人生で得たものも計り知れない。
大地に、うねりをあげるように響き渡る雷。底抜けにパワフルなその大自然の雷の音を聴きながら、ふと、そう思った。
私の旅ストーリー No.202
大森 千寿
NY在住。香川県高松市生まれ。アーティスト・作家・アートセラピスト・米国NLP協会認定マスタープラクティショナー・現代レイキマスター。NY・ハワイ・日本の3箇所にアートスタジオを構え活動。著書に、amazon電子書籍「ハワイに不動産を購入して人生10倍楽しむ方法」「ハワイで聞いた! 32通りの生き方(第一弾)」「人生の冒険」がある。NYで新しい扉を開く2日間プログラムやニューヨーカーと行く穴場ツアー、アート最前線ガイドなど開催中。 www.chizuomori.com ameblo.jp/adamwestonart