1年後のじぶんへ
ここニューヨークは、3月半ばより自宅待機が始まりはや2か月が過ぎ去ろうとしている。その間、季節は春から夏へ向けて着々と準備をはじめている。花を咲き終えた樹々が、新芽をだして、新しい季節へと移ろいでいる中、私たち人間は、依然としてじたばたする日々。
ちょうど、マンハッタンの自宅アパートからそらが見える。いつもなら、毎日、朝から晩までひっきりなしに通過していく飛行機。だが、いまは、ほとんど見かけない。たまに見かけると安堵感すらおぼえる。
飛行機の代わりに、そらにはカモメが楽しそうにのびのびと、その大空を独り占めしたかのような自由さで舞っている。そして、ふと高い高いそらに目をやると、そこには、タカが円を描きながら優雅に舞っている姿が…。
最近は、いつものマンハッタンの通常である工事の音や大渋滞の変わりに、四六時中、鳥たちのかわいいさえずりが街に響き渡っている。ふとした瞬間、マンハッタンにいることを忘れてしまうほどに、エネルギーが変化している。まさに大都会のオアシスだ。
いままで、あたりまえのようにあった日常が絶たれた今、目の前にはたくさんの宝があったのだということに気づかされる日々を過ごしていることに気づく。今日も、朝、あたたかいベッドで目がさめたこと。今日、いただける食事があること。息が吸えること。地球上にじぶんひとりだけじゃないこと…あげ出すときりがないほどに、感謝があふれ、小さなしあわせが大きなしあわせだったのだということに気づかされる。
ニューヨークは、世界中からの人たちが集まる人種のるつぼであり、全米からの移住者も多く暮らしている街。いま、経済も何もかがストップしてしまったなかで、ニューヨークを離れざるを得ない人々がたくさんでてきている。そして現に、毎日この街を去っていく人々…。
夢を求めて、この街へとやってきた人たちが、夢半ばで去っていくその姿をみるのは寂しくもあるけれど、人生とは、後になってみないと何が良くて何がどうだったかなどは、だれにもわからない。いま、地元へ戻ることが自分の夢を叶えるための、そして、本当にじぶんが望む人生を手に入れるための近道だったというひとも少なからず出てくることだろう。いま、目の前で起きていることに、信頼を置いてみようと思う。
1年後の今日という日を、どこで迎えているのだろうか?1年後のじぶんから、いまのじぶんへメッセージを送るとすると、何と声をかけてあげようか?
人生は、あきらめない限り、決して光が消えることはない。いまは、かすかにみえるその光を頼りに、生き抜こうと思う。
私の旅ストーリー No.194
大森 千寿
NY在住。香川県高松市生まれ。アーティスト・作家・アートセラピスト・米国NLP協会認定マスタープラクティショナー・現代レイキマスター。NY・ハワイ・日本の3箇所にアートスタジオを構え活動。著書に、amazon電子書籍「ハワイに不動産を購入して人生10倍楽しむ方法」「ハワイで聞いた! 32通りの生き方(第一弾)」「人生の冒険」がある。NYで新しい扉を開く2日間プログラムやニューヨーカーと行く穴場ツアー、アート最前線ガイドなど開催中。 www.chizuomori.com ameblo.jp/adamwestonart