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【My Destination】第3章 「再挑戦」初日の第一印象 Part3
(前回まで)「世界をまたにかけて働く」ことを幼少からの夢としていた私は、意と反して損害保険会社に入社。順風満帆な生活も束の間、会社が経営破たん。その後の人生を切り開くため渡米しMBAを取得。メガバンク勤務を経て、新たなキャリア形成のため、渋谷にあるベンチャー企業の門を叩く。それから7年後、「幼少からの夢」を追いかけることを決意。2013年6月、遂に理想とするグローバル企業で働くこととなった。
2013年6月中旬。転職から約2週間が経過した。前回寄稿したように、引き続き、私に対して必要以上に声をかけてくる人はいなかった。その一方で、月末に行われる株主総会に向け、私の周辺は一層と騒がしくなっている。夜遅くまで残業する日々が続き、メンバーの顔からも、相当披露していることが見て取れる。ところが、上司からも周りからも特に私に対して総会の支援は言われなかったので、逆に私の方から何か手伝わせてほしいと申し出た。
与えられた業務は、会場までの案内係だった。社会人としてはそこそこの経験があるものの、この会社に入社してまだ2週間足らずである私が難易度の高い業務をいきなり担当するのは非現実的である。なので、たかが案内係とはいえ、私は勇躍して業務を引き受けたのである。
株主総会は六本木ヒルズにて行われた。六本木ヒルズ自体が迷宮化しているため、会場までの案内係は重要任務だった。私の価値観からすれば、来場する株主の一番の目に留まる我々案内係は、いわば会社の顔だ。そして、我々自身が彼らにとっての第一印象となる。だから私は、積極的に来場者に挨拶をし、迷っていそうな方には進んで声をかけて回った。ところが、他の案内係に目をやると、ぼけっとただ立っている者が散見している。株主にお辞儀すらしない者までいる。“お客様は神様”ではないが、ビジネスの常識から逸脱していないだろうか。
総会が終わって数日した後の反省会。私は自分が感じたことを率直に具申したのだが、それ以上に驚かされる光景を目の当たりにした。それは、その会議に提起された反省点に対して、みんなで責任の押し付け合いを行っていたのだ。後日知ることになるのだが、この会社ではミスをすることを極端に恐れる悪習があり、そのため、そもそもリスキーなことには挑戦せず、それでもミスが生じてしまった際は、責任の押し付け合いが日常のように行われていたのだった。
前回も記載したが、この会社は外から見ると非の打ち所がないくらい優秀な会社である。しかし、その優秀さが生んだ負の副産物が確実に存在すると確信するようになった。と同時に、今後の私は、この会社の負の面の是正という大きな試練にいつか立ち向かっていく日が来るだろう、と直感で感じ取っていた。
(次回につづく)
No. 249 第3章 「再挑戦」
Masa Kokubo
1995年中央大学法学部卒。損害保険会社勤務後、アイオワ州の大学院にてMBAを取得。その後、メガバンク、IT企業を経て、現在はグローバル企業にて世界を相手に奮戦中。趣味はサーフィンとラクロス。米国生活は通算7年。
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