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My Destination

【My Destination】第3章 「再挑戦」ベンチャー最終日

(前回まで)「世界をまたにかけて働く」ことを幼少からの夢としていた私は、意と反して損害保険会社に入社。順風満帆な生活も束の間、会社が経営破たん。その後の人生を切り開くため渡米しMBAを取得。メガバンク勤務を経て、新たなキャリア形成のため、渋谷にあるベンチャー企業の門を叩く。それから7年が経過して「幼少からの夢」を追いかけることを決意。20134月下旬、遂に理想とするグローバル企業から内定通知が届いた。

 2013531日。数日前にハワイでの充電から帰国した私は、勤務先であるベンチャー企業の最終日を迎えていた。ハワイでの目的は十分すぎるくらい達成した。来月から始まる新天地での不安が無いといったら噓になるが、今まで行ってきたことに関しては自信に満ちていた。そしてその自信を提供してくれた環境、即ちベンチャー企業で経験した全て、に対しては感謝の言葉しかない。そんなメンタリティーで会社に向かった。

 会社に到着し、その足で社長室に向かった。遡ること7年半前。今とは違うが、当時の社長室のドアを開いた時から私の人生が大きく変わった。その選択をして本当に良かった。それから数え切れない位このドアの前に立って、様々な心境でノックしてきた。そのルーティンもこれで最後となる。そう思うと、感傷的な気分が襲ってきた。

 社長室に入ると、社長は私に席を勧めながら、「お前は本当によくやってくれたよ」とねぎらいの言葉をかけてくれた。そして、思い出話に一通り花を咲かせると、「お前ももう40歳だろ。今後は敵を作るな。お前は能力が高いんだから、敵を作らなければ何事もうまくいくよ」とこの人らしいメッセージで結んだ。最後の最後までボスであった。なお後日談であるが、私はこのアドバイスを忠実に守り、結果として、新天地では良好な人間関係を築くと同時にとんとん拍子で出世していくことになる。

 社長室を後にして自身の経営企画室に向かう。10名近くの部下達も今日が私との最後の時間ということを重々理解しており、それぞれが複雑な面持ちで業務にあたっている。彼らには仕事や飲みニケーションを通じて、私が持っているスキルから哲学まで全てを教えた。このような情景がある。ある時、部下の一人が人事部長と対峙していた。その時彼は、まるで私が乗り移ったかのようなロジックで交渉していた。今後は彼らが私に代わって会社の屋台骨を支えていく。心配のかけらは微塵もない。

 オフィスを去る前に、会社にいるすべての人に挨拶して回った。半数近くが私より後に入社した人だ。それもそのはずで、入社時から会社の規模は2.5倍近くに成長した。その成長に私も直接的あるいは間接的に関与できた。誠に光栄である。

 長く使用した社員証を人事部長に返却し、オフィスの出口でオフィスに向かって深々と頭を下げた。色々な出来事が改めて思い返された。どれ位その状態でいたのだろうか。我に返ったのは、「さあ、行きますよ!」という部下からの声であった。そして最後の送別会会場に向かって、ともに歩き出した。

(次回につづく)

No. 246   第3章 「再挑戦」

Masa Kokubo

1995年中央大学法学部卒。損害保険会社勤務後、アイオワ州の大学院にてMBAを取得。その後、メガバンク、IT企業を経て、現在はグローバル企業にて世界を相手に奮戦中。趣味はサーフィンとラクロス。米国生活は通算7年。

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