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垂直立上げ

垂直立上げ

(前回まで)「世界をまたにかけて働く」ことを幼少からの夢としていた私は、意と反して損害保険会社に入社。順風満帆な生活を送っていたが、会社が急きょ経営破たん。その後の人生を切り開くために渡米しMBAを取得。その後メガバンク勤務を経て、経営企画マンとしてのキャリアを積むため、渋谷にあるベンチャー企業の門を叩く。入社から1年半後、子会社であるISP社の立て直しのため転籍、副社長に就任した。

 

 2007年度末に実施された親会社も交えた幹部会でISP社の方向性が決定された。新規ビジネスに進出するにあたり、設備投資や人材採用は徐々に行うべきと慎重論を唱えた私は惨敗した。しかし、会社の方向が所謂“垂直立上げ”と決定した以上、それを推進するのが副社長としての私の役目であった。ただ、運命のいたずらか、私に求められる役回りと私が以前から熱望していたこととが見事に一致することとなり、大きなモチベーションを持ってあたることとなった。それは、人材採用であった。

 子会社への転籍を受諾した理由のひとつに当時の親会社への不満が無かったか、と言えば嘘になる。経営企画室長として親会社における様々な経営課題に直面してきたが、その中には外部環境というよりはむしろ、我々のやり方に問題があるものも散見した。そのようなものを見るたびに“私がやっていたら”と心にすることがしばしばあった。だからこそ、子会社でそのような事象に対して私が思うがまま行い、「やり方次第では不可能と思われていたことも可能」という成功事例を親会社に突き付けてやりたいと願っていた。人材採用は親会社における大きな経営課題の一つ。“私だったら必ず成果をあげられる”とずっと思い続けていて、そして、とうとうその機会が巡ってきたのである。

 まず私が着手したのが人材紹介会社の使い方。多くの会社が採用には人材紹介会社を使用するが、そもそもその人材会社がきちんと仕事をしなければ期待した成果は得られない。だから私は人材会社とゴールを明確に握ることから始めた。たまたま私のラクロス関係の後輩で大手人材紹介会社の出世頭になっている者がおり、その者に我が社の目指していることとわが社に注力することのメリットを説いたところ、数日後には彼がチームメンバーと共に私の前に現れ、「小久保さん、エース級をアサインしましたよ」と胸を張って力説した。この者たちの働きは、後輩の言葉通り目を見張るものだったのだが、その話はそこまでとする。

 次に私が大切にしたことが、採用活動をいわゆる営業と捉えたこと。志望者に対する売り物はISP社だが、知名度も低く実態も掴みづらい会社だから会社名だけでは志望者の心は動かない。従って、社長や私こそが会社と位置付け、我々を徹底的に売り込んだ。この利点は、入社前に我々をすみずみまでさらけ出しているので、結果として心底から我々の思想に共感してくれる者が入社してくれたことだ。

 これらのやり方が功を奏し、なんと二か月あまりで正社員20名、アルバイト約150名の採用に成功した。これは親会社における平均採用効率の10倍近い値であり、後輩の所属する大手人材紹介会社のギネスレコードになったと聞く。 

 このようにして、新生ISP社の屋台骨が着々と出来上がっていったのである。

(次回につづく)

No. 195   第3章 「再挑戦」

Masa Kokubo

1995年中央大学法学部卒。損害保険会社勤務後、アイオワ州の大学院にてMBAを取得。その後、メガバンク、IT企業を経て、現在はグローバル企業にて世界を相手に奮戦中。趣味はサーフィンとラクロス。米国生活は通算7年。

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