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My Destination

【My Destination】第3章 「再挑戦」ハワイ Part 4

 今回も、「幼少からの夢」へのチャレンジまでの残された時間をハワイで過ごしていた時の話を続けたい。

 ここ数回寄稿したように、このハワイ一人旅は、今後の飛躍に向け良い充電期間となった。そして一人であるが故に、多くの考えごとをする時間があり、過去の経験の整理もできた。わざわざそんなことを敢えて言うのも、普段は目の前のことに忙殺され、頭を整理するゆとりが無かったからだ。

 IPO(新規株式上場)準備やM&A、子会社の副社長といった華々しい経験がある一方、一見地味に見える経営管理の業務なども地道に行ってきた。そんな地道な業務の中でも、緊張感が極度に高まることが頻繁にあった。代表的なものが取締役会だ。

 取締役会は会社における業務執行上の最高位の意思決定機関であって、重要事項はこの取締役会の承認が必要と法律で定められている。IPOを目指す我々としては上場企業と同等(あるいはそれ以上)のクオリティの会議運営が求められ、その基準を満たすため、取締役会構成員の半数近くは社外のスペシャル人材を登用した。親会社の知名度や社長の人脈からそうそうたる人物が名を連ね、いわゆるゲートキーパーのような役割を果たしたものだから、会社の提案が無事承認されるか、取締役会事務局長として、私は冷や冷やしながら議論を見守ったものだ。

 そのような強者ぞろいの社外役員の中でも、群を抜いている方がいた。この方は数回前の寄稿でも簡単に触れたが、小説「金融腐蝕列島」に出ているカミソリ佐藤のモデルとされている伝説の銀行マンであった。まず存在感が凄い。この方が会議室にいるだけで周りの空気が一瞬にして張り詰める。言葉数は決して多くないが、発する言葉は全て物事の核心をついているものであり、その内容について反論する余地すらなかった。

 核心部分の詰めが甘い場合は、その提案が承認されることはまずない。だから私以下の事務局は、事前に会議資料を入念にチェックして、詰めが甘いところは起案者に対して修正するよう求めた。それは資料だけでなく、資料の先にある契約の条件など多岐に渡たり、取締役会の名の下、多くの事象が影響を受けることとなった。今まで当然としてやってきたこと以上のことを求められるのは当事者としては大変なことかもしれないが、その対応を行ってきたことにより、結果として会社全体の実力を総合的に上げることができた。この方によってもたらされた良い副次効果であった。

 そして、取締役会事務局長としてこの方に最前線で対応してきた私自身も、「この方だったらこう考えるだろう」という感覚が自然と備わっていった。それこそ、この方のビジネスに対する信念と姿勢を直接学ばせてもらったようなものだ。なお、この伝説の銀行マンは、私が以前勤務していたメガバンクの大先輩であった。メガバンク勤務の頃の私はスランプが続き、その結果メガバンクであるが故のものの見方などを身に付けることは叶わなかった。でも時と場所を変え、この大先輩からそのメガバンクのDNAともいうべき感性を叩きこまれた気がする。

(次回につづく)

No. 242   第3章 「再挑戦」

Masa Kokubo

1995年中央大学法学部卒。損害保険会社勤務後、アイオワ州の大学院にてMBAを取得。その後、メガバンク、IT企業を経て、現在はグローバル企業にて世界を相手に奮戦中。趣味はサーフィンとラクロス。米国生活は通算7年。

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