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【My Destination】第3章 「再挑戦」ハワイ Part 1
(前回まで)「世界をまたにかけて働く」ことを幼少からの夢としていた私は、意と反して損害保険会社に入社。順風満帆な生活も束の間、会社が経営破たん。その後の人生を切り開くため渡米しMBAを取得。メガバンク勤務を経て、新たなキャリア形成のため、渋谷にあるベンチャー企業の門を叩く。それから7年が経過して「幼少からの夢」を追いかけることを決意。2013年4月下旬、遂に理想とするグローバル企業から内定通知が届いた。
2013年5月16日午後。全ての業務引継ぎを終えた私は、新天地での業務開始日である6月1日までの期間をハワイで過ごすため、成田空港に向かっていた。途中、妻の幼馴染が経営する美容室に立ち寄り散髪すると、幼馴染は空港まで車で送ってくれるという。“そこまでは面倒かけられません”と再三辞退したものの向こうも引き下がらないので、お言葉に甘えることとした。空港に到着すると、別れ際に一つの紙袋を手渡された。
ハワイにショートステイすることにしたのは、いくつかの理由がある。まずは、来月から始まる「幼少からの夢の実現」に向けての充電である。これには英語力のキャッチアップも含まれる。この時点から遡ること9年前に米国の大学院にてMBAを取得した。しかし帰国後は、仕事どころかプライベートにおいても一切英語に触れる機会はは無かった。この短期間で以前同等の英語力に戻るのは非現実的かもしれないが、指を咥えているよりはましだ。
2番目の理由はサーフィンだ。数年前にラクロスをリタイアしてからは、サーフィンが趣味の中心となり、今やサーフィンは一生付き合っていきたい趣味になっていた。しかし、現状の技量では、老いてからは楽しめなくなることもあり得る。故に身体がしっかり動くうちにそこそこのレベルまで技術を向上させたいと常に願っていた。そのためには集中して取り組む事が必要であり、その意味ではハワイは最高の環境であった。
航空会社のカウンターで搭乗手続きを済ませた私は、発着案内板に目をやった。自分が搭乗するホノルル便がON TIMEと表示されている。その瞬間、大昔の記憶がフラッシュバックした。
時は遡ること約30年。当時小学6年生だった私は、地元の駅に居た。数週間前に両親から、私立中学に進学することで将来が大きく開ける可能性を説明され、中学受験を目指すため隣町にある進学塾に通うことを決断した。その初登塾の日、駅のホームで、「ここから自分の人生を大きく変えていくんだ」と自分に言い聞かせながら電車を待っていた。記憶の奥底に眠っていたその情景が、突如鮮明に思い出されたのである。
そして今、似たようなシーンが繰り返されている。私はこれから長年の夢に挑戦する。
そう思うと胸の高まりを抑えられなくなってきた。近くにあるベンチに腰を下ろし、冷静さを取り戻そうとした。すると、先ほど妻の幼馴染に渡された紙袋の中身が気になった。開けてみると、「頑張れ!」というメモと共に、サンドウィッチが入っていた。急に空腹感を覚えた。
この時のサンドウィッチの味は生涯忘れられないものとなった。
(次回につづく)
No. 239 第3章 「再挑戦」
Masa Kokubo
1995年中央大学法学部卒。損害保険会社勤務後、アイオワ州の大学院にてMBAを取得。その後、メガバンク、IT企業を経て、現在はグローバル企業にて世界を相手に奮戦中。趣味はサーフィンとラクロス。米国生活は通算7年。
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