【閑話休題】 COVID-19
(前回まで)このコラムは波瀾万丈の私の半生を綴っているもので、現在はMBAを取得し凱旋帰国した2004年6月あたりを連載中であるが、COVID-19についてお伝えしたいメッセージもあるので、今回は筆休めをしてその話をしたい。
今からひと月前、私は会社の役員会議室にて連日におよぶCOVID-19対策の会議に出席していた。過去にも経験が無いことだし、この先どうなるか見当もつかない。会社のリスクマネジメントポリシーは、すでに無用の長物に成り下がった。そのような中、ふとある出来事を思い出し、不謹慎かもしれないが、懐かしさがこみ上げてきた。
遡ることちょうど20年。当時私が勤めていた損害保険会社が経営破たんした。損害保険会社としては戦後初の破たんであり、その処理についてはすべてが手探り状態であった。本社の中枢にいた私は、この破たん劇を間近で見てきたが、まさにその時の情景と今置かれている現実が重なって見えたのだった。
破たんが発表された時、私は本社の指示で顧客対応が困難を極めるだろう営業店の応援に駆け付けていた。その時パニックに陥った人々の対応に直接携わった。また、自分たち社員も今後のこと、もっと具体的にいうと「雇用」は全く不透明な状態になっており、精神の不安定さは極限に達していた。この様な地獄のような経験をしてきたものだから、今回のCOVID-19に関しても、他の人よりは少しは冷静に受け止めているかもしれない。
私は、この20年前に自分に降りかかった災難をとてもポジティブに捉えている。これにより、私は長年の夢だった米国でのMBA留学にチャレンジすることが出來、引いては幼少からの「世界を股にかけて働く」という夢を実現するに至る。だから、今回のCOVID-19も、この苦難を乗り越えた時に、何かしら我々にとってプラスになるものがもたらされるのでは、という一種の期待を持っている。
ロックダウンされている街で、人が人を励ます活動が行われている。医療従事者に自発的に賛辞を贈る人がいる。もしかしたら、このような人として持っている思いやりとかの再確認など内面的なことがこの苦難でもたらされるプラスの部分かもしれない。それは本質的にはとても大切なものなのだけど、平時では優先順位が下げられていたもの。
この機会に、自分にとって本当に大切なものとかを改めて考えてみてはいかがでしょうか。災い転じて福となす、を地で行きたいですね。
No. 163 第3章 「再挑戦」
Masafumi Kokubo
ミネソタ州ウィノナ在住。1995年中央大学法学部卒。損害保険会社勤務後、アイオワ州の大学院にてMBAを取得。その後、メガバンク、IT企業を経て、現在は全米最大の鎖製造会社の副社長を務める。趣味はサーフィンとラクロス。