「平成レトロ」というフレーズを目にしたときの衝撃。それは、ここ数年で一番大きなものでした。30の大台に乗りこそすれ、心はまだまだ若いつもりだったのに。私が生まれ、生き抜いてきた平成は、もはやその哀愁を計り売りする存在になってしまったのか、と。いや、そうなるのはまだ早い。たとえば、モダンとロマンの邂逅の時代・大正をレトロとするのは分かりますが、平成なんてたったの5年前。何をして、そんなに昔のものと言いたいのでしょうか。
平成レトロの指すところとしては、たとえば、ストーンでゴテゴテにデコレーションされた二つ折りの携帯電話や蛍光色を多用したファンシーグッズ、それから1メートルを超えるルーズソックスにミニスカート、使い捨てカメラ。鮮やかで派手なイメージでしょうか。総じて、いわゆるZ世代が生まれる前に流行っていたものを指すようです。私たちにしてみると「昔流行って、廃れたもの」ですが、彼ら・彼女らの目には、一周回って新鮮でオシャレに映るようです。
その時代ど真ん中の私にとっては、昔抱いていた憧れや、当時の背伸びした気持ちをくすぐられているようで、自分が年齢を重ねたという事実を認めたくはありませんが、それはそれで嬉しいものです。
小学生の頃、喉から手が出るほどに欲しかった、ギラギラに輝くハート型のヘアピン。デニム生地で作られたバッグ。当時はお小遣いではとても買えない代物でしたが、今なら難なく買えてしまう。きっと、「平成レトロ」を唱える悪い大人たちは、その「かつての平成女子」の事情をわかっていて、財布の紐を緩めさせようとしているに違いありません。
そんな悪い大人がいるかどうかはさておき、平成に流行ったものが次々とリバイバルしているのはどうやら事実のようです。ファッション、ゲーム、生活用品に至るまで、さまざまな形で平成が顔を出してきているようです。
思えば、平成はある種不遇の時代でもありました。日本ではバブルの崩壊、そこから続く不景気の時代。世界規模でも戦争や紛争が絶えなかった時代でもあります。しかし、平成の人々はそんな時代をポップで騒がしい文化を作ることで、世の中の不安を吹き飛ばそうとしていたのではないでしょうか。
だとするならば、思い切りカラフルなあの毎日に思いを馳せながら、みんなで超ハッピーになろうではありませんか。在りし日の平成キッズのように。
CAN OF ALOHA No.104
金平 薫 (Kaoru Kanehira)
香川県出身、現在はハワイ某所にて武者修行中。 日々のあれこれを、ゆるりとお伝えできたら幸いです。美味しいものには目がありません。 なんでもない毎日は Instagram:kaoru_days をご覧ください。