先日、ふと見た自分の手があまりにもむっちりしていて衝撃を受けました。俗にいう「クリームパンハンド」である自覚はあったのですが、これほどまでに身の詰まったクリームパンであるとは。しかもいつも深爪気味で化粧っ気のない手。長年、何となく長い爪が苦手で、白い部分が生えてきたらすぐに切り込んでしまった末路です。
これではいけないと一念発起、爪を伸ばしてみることに決めました。折れたり割れたりしないように補強用のマニキュアを塗り、毎日オイルで保湿。形を整えるためには爪切りではなく爪やすり。手洗いの際は爪ブラシも必須。世の女性は日々こんなに頑張っているのかと、気が遠くなる思いでした。
その甲斐あってか、しばらくするとまるで大人のレディのような手に。クリームの量は据え置きですが、指が長く見えることですらりとした印象に。タイピングしたり、お箸を持ったり、ことあるごとにちょっとオトナな気分になりました。しばらくはネイルケアに力を入れて、もう少し綺麗になったらサロンにも行ってみようかな、とワクワクしていました。
しかし、そんな背伸びした日々は唐突に終わりを告げるのです。ある日、車の座席の位置を調整しようと、座席下のレバーに手をかけた瞬間、変な風に力がかかったのでしょうか。右手中指に激痛が走りました。見てみると、指先からは血が滲み、そこに心臓が移動したかのように錯覚する痛み。爪が根本から折れてしまったのです。
利き手ということもあり、そこから数日間は大変不便な日々を過ごしました。ご飯を食べるのも一苦労、タイピングもできないし、髪の毛も左手だけで何とか洗う始末。絆創膏を貼ること自体が至難の業。少しは良くなってきましたが、しばらくはこの中指との付き合いになりそうです。
そして、他の九本の指たちも短く切ってしまいました。もちろん、とても残念だったのですが、同じように折れても困ります。実際に切ってみると、実家に帰ったような安心感がありました。やはり私のこのまんまるクリームパンには、こちらの方がよく似合っている気もします。
さて、この一連の事件から学んだことは何でしょうか。「慣れないことはするべきではない」なのか、「落ち着いて行動しなさい」なのか、はたまた「美は痛みを伴うものである」なのか。爪が伸びるまでの不便な日常の中で、その答えを見つけたいと思います。
CAN OF ALOHA No.103
金平 薫 (Kaoru Kanehira)
香川県出身、現在はハワイ某所にて武者修行中。 日々のあれこれを、ゆるりとお伝えできたら幸いです。美味しいものには目がありません。 なんでもない毎日は Instagram:kaoru_days をご覧ください。