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【CAN OF ALOHA】「はじめてのおつかい」のおはなし
最近、Netflixで日本の長寿番組『はじめてのおつかい』が全世界で見られるようになりました。
小さい子供が、たったひとりで「おつかい」にいく姿を追ったこの番組。もちろん、スタッフが周りを取り囲み、安全は確保されてはいますが、当の本人はもちろん自分一人での大冒険のつもり。治安がよく、割と子供を一人にしておくことに抵抗のない日本だからこそできるこの番組は、世界中の人たちの興味をひきつけてやまないようです。
たしかに、アメリカでは、例えそれが実際には安全な「ショー」の一つであったとしても、まだ小学校にも上がらない子供が一人で街を歩くなど考えられません。もし、子供がひとりでふらふらと歩いていたら、即通報され、虐待とみなされてしまうでしょう。
そういった物珍しさもありますが、小さい子供が必死に歩いて目的地にたどり着き、おつかいをして、そして家に帰る、その一連のドラマに心温まる人も多いようです。時には失敗してしまったり、泣き出してしまったり、それでも頑張るそのひたむきな姿には、胸が熱くなってしまいます。見ず知らずの子供ではありますが、大切な成長の一歩を分かち合えたような気にさえなって、つい画面のむこうに熱いエールを送ることもあるでしょう。
自分が子供のころを思い返すと、車社会の田舎で育ったこともあり、残念ながら「はじめてのおつかい」の記憶はありません。ただ、幼稚園の年長のころには歩いて10分くらいのピアノ教室まで一人で行っていました。田んぼのあぜ道を通って、びっくりするくらい大きなガマガエルを踏まないように気を付けながら、農作業をする近所の人に「行ってらっしゃい」と言われて、足を進めました。いつも大人と一緒の自分が、たった一人で道を歩いていることに、もちろん心細さや不安も感じていましたが、それ以上に、なんだか誇らしいような、お姉さんになったような、こそばゆい気持ちを抱えて、ピアノ教室に向かったものです。
あの頃ピアノ教室で習ったことは、残念なことに何一つ身についていないのですが、あの日のたった10分の道のりは今でも鮮明に覚えています。番組に出ている子供たちも、いや、テレビには出ていないすべての子供たちも、いつか大人になったときに、大切な一日のことをそのように思い出す日が来るといいなと思います。
CAN OF ALOHA No.79
金平 薫 (Kaoru Kanehira)
香川県出身、現在はハワイ某所にて武者修行中。 日々のあれこれを、ゆるりとお伝えできたら幸いです。美味しいものには目がありません。 なんでもない毎日は Instagram:kaoru_days をご覧ください。