コロナうつ? 幸せ?
「ただひとつ風にうかびてわが庭に 秋の蜻蛉の流れ来にけり(若山牧水)」
東京は九月末の長雨で夏の気配がすっかり洗い流されてしまいました。既にカーディガンなどを羽織る気温となりましたが、昨日我が家の庭で蜻蛉が飛ぶ姿を見つけました。仲間の蜻蛉たちは既に先立ってしまったのか、心なしか寂しそうでした。世界的に相も変わらずコロナ禍は終息の兆しがみえてきません。外出自粛などによって経済が下降することはヒトの生活に多大な影響を与え、健康を意識した生活スタイルの変更も要求されています。健康と経済の両輪が揃って安定的に動くようになるにはまだ暫く時間を要するでしょう。
感染や生活への不安、外出自粛などで他者との関わりが少なくなっていることなど、様々な要因がありますが、世界的に“コロナ鬱”が懸念されています。既に一度お伝えしておりますが、ご高齢の方の場合には併せて認知症発症の懸念もあります。コロナ鬱にならないために、私たちはどんなことに注意すればよいのでしょうか? ハーバード大学医学部准教授で「アメリカうつ・不安障害協会」会長のルアナ・マルケス博士が対処法について語っています。その内容をまとめると、①携帯電話やTVから離れて情報を遮断する時間を作る②食事時間など従来の生活習慣を維持する③一人暮らしの場合、電話などを利用し会話をして他人との関わりを続ける④在宅勤務の場合には規律を保ちスケジュール管理を行い、ON/OFFの切り替え時間を設定する⑤ペットと触れ合う/今までペットを飼えなかった環境でも在宅勤務など自宅での時間を確保できれば充分にペットと触れ合うことができる、などなどです。
犬や猫などは飼い主が適切に世話をすることを必要としますので、時間の管理も併せて行うことができます。但しペットは家族です。コロナ鬱予防のために共に暮らすのではなく、家族の一員として遇することが大切です。様々な制約の中でポジティブに生活するか、ネガティブかは個人差があります。日本人の場合、ネガティブ思考が強いと言われていますが、ネガティブであるからこそ物事を慎重に判断したり、不完全さに敏感になり丁寧に行動したりといったメリットもあります。その反面、人生を楽しむことが苦手になりがちといったデメリットも見受けられます。大人になるとどうしても「こうあるべき」という主流の価値観に縛られて周りの目が気になり、結果として自縄自縛になりがちです。日本人の幸福度ランキングは世界の中で58位(2019年度調べ)で、社会の寛容さは92位となっています。社会的な自由が担保されている日本国憲法の下での結果は日本人特有の同調圧力なのでしょうか? 社会的制約から一歩離れて、真の幸福がどこにあるのか、その幸福への第一歩を踏み出すチャンスをコロナ禍に見出してみませんか?
神楽坂発 お身体へのお便り No.85
安田祥子 Akiko Yasuda
株式会社jast代表取締役会長
統括メディカルアドバイザー、フリーライセンスドクター、「農林水産省 産学共同プロジェクト」メンバー
最愛の娘の突然の死をきっかけに、健康は当たり前のものではなく、自らの手で守り育むものと痛感し、分子生物学や医学などを学ぶ。2013年(株) jastを設立し家庭と医療機関を結ぶ架け橋としてのアドバイザー育成に取り組む。これまで200件以上のクライアント様の健康・医療・日常生活のご相談に応えるとともに、教育部門JAMAで主席講師を務め分子生物学の観点から細胞に働きかける栄養素や最新の遺伝子研究など多岐に渡る講義を行う。数多くの機関誌への執、講演会、セミナーなども行っている。
シェアする