ワクチンと子ども
梅雨はジメジメなど不快な表現が現代社会では伝えられがちですが、古来より日本人は雨に特別な思い入れがあったようで短歌や和歌には多く読み込まれてきました。しとしとと降る雨に濡れて際立ち木々の美しさや逢えない人を想う気持ちが感じられるのも日本人特有の感性かもしれません。梅雨の美を感じられるのは時が緩やかに流れる自粛生活の楽しみではないでしょうか。
無粋ではありますが、コロナワクチン接種が進む中、米国小児科学会ニュースを取り上げてみたいと思います。このニュースには今後、日本でも始まる若者のCovid-19接種後の有害事象について報告されています。mRNAワクチン(ファイザーやモデルナ)2回目接種後に16~24歳の男性で心膜炎、心筋炎の発症が想定以上に多く認められているため、CDC(米国疾病予防管理センター)は18日急遽専門家会議を開催しました。現時点(6月18日現在)で30歳以下の発症は入院例が475例報告されていて、幸い経過は良好で81%は退院、完全回復しているそうです。
接種が早いペースで行われたイスラエルでも同様の報告が上がっています。心筋炎とは心臓の筋肉に炎症が起こる疾患ですが、明確な診断が難しいようで、40歳以下の突然死の約20%が心筋炎によるものとも伝えられています。心膜炎は心膜に炎症が起こるもので、概ね軽症といわれています。
両方の疾患はウイルス感染によるケースが多く、Covid-19に伴って発症することは知られています。ワクチン接種後の7日以内に若い成人や小児に胸痛、息切れ、動悸などの症状が現れたら、躊躇わずに医療機関を受診し、必要があればドクターに心筋炎や心膜炎の可能性があるか、伺ってみましょう。
また、6月16日に日本小児科学会が声明を発表しました。この声明では子どもを感染から守るために、まず周囲の成人が免疫を獲得することが重要とし、成人接種を優先すべきこと(子どもに関わる業務従事者は職種、勤務形態を問わずワクチン接種が重要)、そうした上で子ども自身への接種については、12歳以上のワクチン接種には意義があり、個別接種が望ましいこと、接種を希望しない子どもや養育者を特別扱いしない配慮が必要でることなど伝えられています。
日本小児科学会ではワクチン接種に有用性を認めながらも、子どもは副反応頻度が高いことが報告されているため、主治医と養育者による体調管理と接種後の観察が重要とも伝えています。
神楽坂発 お身体へのお便り No.94
安田祥子 Akiko Yasuda
株式会社jast代表取締役会長
統括メディカルアドバイザー、フリーライセンスドクター、「農林水産省 産学共同プロジェクト」メンバー
最愛の娘の突然の死をきっかけに、健康は当たり前のものではなく、自らの手で守り育むものと痛感し、分子生物学や医学などを学ぶ。2013年(株) jastを設立し家庭と医療機関を結ぶ架け橋としてのアドバイザー育成に取り組む。これまで200件以上のクライアント様の健康・医療・日常生活のご相談に応えるとともに、教育部門JAMAで主席講師を務め分子生物学の観点から細胞に働きかける栄養素や最新の遺伝子研究など多岐に渡る講義を行う。数多くの機関誌への執、講演会、セミナーなども行っている。
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