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【今どき ニッポン・ウォッチング】日本最初の洋上風力発電所 12月に商業運転開始
総事業費約1千億円を投資した日本初めての洋上風力発電施設は、コロナ禍の影響下にも拘わらず、ほぼ当初の予定通り、今年12月中に正式に発電を開始できる見通しとなった。この洋上風力発電が確実となったがゆえに、まず我が国の東北地方における冬の電力不足の緩和に、一役買いそうである。
国内初めての洋上風力発電所の建設が進むのは能代港沖と秋田港沖の2か所にある。合計33基の風車は海底から立つ着床方式で、海面から羽根の最高地点まで約150メートルほどあり、40階建てのビル並みである。出資した民間企業は大手商社の丸紅を軸に、大手電力会社や建設会社などが出資した「秋田洋上風力発電」(秋田市)が開発を担うこととなった。当初の計画では、2020年に着工し、2022年末までに営業運転を始める目標を掲げていた。
この秋田洋上風力発電は、合計約14万キロワットの発電能力があり、平均的な家庭約13万世帯分の電気を賄えるという。今年の7月から能代港沖で風車の設置に着手した。幸い、大雨やコロナ禍の再拡大の影響は限定的で、全体の工事進展に大きな遅れの影響は出なかったという。
工事総責任者である丸紅出身の岡垣啓司社長は、現在の工事進捗状態から、11月中には営業運転に入る見通しであり、年内に2か所の全ての風車が営業運転できそうである、との明るい見通しを正式に発表したのである。岡垣社長が最後に「一刻も早く実績をつくることで、今後の資金調達にもプラスになる。それが日本での洋上風力発電の導入拡大の起爆剤になれば」と強調したのが印象的であった。
日本の洋上風力発電は、開発や普及では欧米に比べ、30年以上も遅れていると言われてきた。そのため、この度の「秋田洋上風力発電」の「快挙」は、遅きに失したとはいえ、我が国への今後の洋上風力発電に大きな一歩を踏み出したことに違いない。
洋上風力発電は、事業規模が数千億円、部品数が数万点に及ぶ、すそ野の広い産業であることから、関連産業への経済波及効果も期待できる。そのため今後は一大産業として育て、競争力を強化していくために、2021年12月に「洋上風力産業ビジョン」という基本戦略が発表された。その戦略の大きなポイントを要約すると、「魅力的な国内市場を創出し、国内外の投資を促進するとともに、サプライチェーンの形成を目指し、アジア市場への展開も見据えた次世代技術の開発や国際連携を進めること」であると言う。
わが国はG7の一員ではあるが、先天的な資源小国でもあるため、色々な創意工夫によって、これまでも人類共存の平和と幸せのために尽力してきた。そのゆえ世界各国から常に賞賛され、信頼されてきた。これからも、この実績を基調に洋上風力発電の更なる発展を目指して行くことを期待する。世界各国と緊密に協力し合い、脱炭素と脱原子力の基幹エネルギー源として、人類のより良い生活環境を築き上げるべく、日本は引き続き力を尽くす必要があるだろう。
今どき ニッポン・ウォッチング Vol.240
早氏 芳琴