ドローンが失踪認知症患者発見に貢献
日本の人口構成が、少子高齢化の最先端を走っている現象は周知の事実である。それにより認知症患者は増え続け、失踪する者もそれに伴って増加し、事故や遭難に巻き込まれるケースが増えるという痛ましい現実がある。
厚生省の統計によると、認知症の高齢者は2012年の約462万人から2025年までには約700万人に増えると見込まれ、高齢者の5人に1人が認知症となる可能性が高い。一方、警察庁の発表に拠ると、昨年の1年間、警察に届け出があった認知症の行方不明者は、前年より552人多く、延べ1万7479人となり、7年連続で最多を更新したことになる。また、遺体で発見されたのは、以前に届けられた人を含め、計460人となった。
注目すべきは、行方不明者の全体に占める認知症の割合は、年々増えており、昨年は20.1%だった。その中でも高齢者の人数は特に多く、70歳以上が92.6%もあった。
都道府県警別にみると、行方不明者は大阪が2007人で最も多く、次が埼玉県の1960人で、兵庫県が1778人であった。以前の届け出を含め、昨年中に見つかったのは全国で1万7340人、うち96.7%が生存しており、71.7%が届け出の当日に、99.4%が一週間以内ではあるが発見されている。
行方不明者を無事に発見するための努力は、各地の関係当局が懸命に行っているが、必ずしも全員を失踪早期に発見し、無事に保護することが出来ないのが、大変悩ましいところである。
近年は各種の電子機器が発達しているため、認知症患者の約4割が行方不明になった時に使う全地球測位システム(GPS)端末の貸与や購入補助などが行われているが、それでもまだ行方不明の認知症高齢者の即時全員救出という成果を収めることが出来ないのである。
そこへ新たに“白羽の矢が立てられた”のが小型無人飛行機(ドローン)である。ドローン利用の発案者は京都府に本部のある公益社団法人「認知症の人と家族の会」であった。日本では都市や住宅地区でのドローンの飛行は、厳しく規制されている。しかしながら関係当局に正式な手続きをすることによって、許可されるばかりでなく、他の民間組織からの支援や協力も得ることが出来るのである。
幸いなことに、同社団法人は関係当局の許可を得ることが出来、今後はドローンを行方不明者が居そうな場所に飛ばすことが出来るようになった。そこで、ドローンの活用が失踪者の発見と救助に役立つことが大いに期待されている。
日本の人口構成がこれからもなお少子高齢化現象が進むと思われるなかで、京都府のこの民間組織がドローンを使って行方不明の認知症患者の発見に大きな成果を収めることが出来れば、ドローンの利用は日本各地に広まるであろう。これは認知症患者本人は勿論のこと、その家族や関係者にとっても、大変喜ばしいことである。
今どき ニッポン・ウォッチング Vol.185
早氏 芳琴