いよいよ水素エンジン車幕開け近し?
目下、世界的に半導体の不足により、大手自動車の製造工場では、減産や一時生産停止が余儀なくされている。一方、自動車業界では、この一時的な苦境を早急に脱出し、「脱炭素」の新技術開発により、自動車業界の起死回生を図ろうと必死になっているようである。
周知のように、これからの自動車業界の生存競争は、如何にして順調にガソリンエンジン車から電気エンジン車に切り替え、或いはさらに進んで水素エンジン車の実現に、社運を賭けているようである。
現状を見てみると、電気エンジン車では、中国が最も力を入れているようであり、しかもかなりの成果を収めているようであるが、欧米諸国と日本の大手自動車会社も負けじと、全力を挙げて追いかけているのが実情の様である。中でも米国のテスラ社は、既に世界市場である程度の実績を収めることができ、電気エンジン車で名が知られるようになってきた。
世界的に最大級の生産量と最高の性能を誇りにしている我が国のトヨタ自動車は、電気エンジン車の生産においても、然るべき成果は収めてはいるが、今のところ特に顕著な話題に乏しく、トヨタファンをイライラさせている状態が続いている。しかし、よく考えてみると、今やすでに世界の自動車会社「トヨタ王国」を築き上げているトヨタは、これから一挙に「脱炭素」の最先端へ突き進む水素エンジン車の新時代を目指し、密かに最後の追い込みに社運を掛けているようにも見受けられる。
トヨタがこの水素エンジン車に賭ける思いは、社長の豊田章男氏が先月、富士スピードウェイでの自動車24時間耐久レースに、自らもドライバーとして参加し、自社の水素エンジン車が無事全行程を走破したのを実体験したことからも伺い知れる。社長のこの思い切った行動こそ、水素エンジン車がこれから一般乗用車として最も理想的な「脱炭素」車であることを、全世界に強くアピールする決意があったに違いない。
トヨタの水素エンジン車は、数年前から正式にデビューはしているものの、未だに世界的に最も理想的な次世代車として正式に認知されてはいない。燃料水素を供給できるスタンドが未だ全国的に普及されていないなかで、いつになれば全国的に供給できるかも確実に示されていないことは、水素車開発にとって追い風となっていない。
水素生産の開発に向けて、日本を含む世界の経済的先進国は、近年それぞれ必至に取り組んでいる。そのような中で、最近日本の水素に関して注目のニュースがある。それは、現在神戸港に停泊している一艘の大型で・奇形な運搬船、川崎重工業建造の水素運搬船「すいそ・ふろんていあ丸」である。
水素は常温では気体であるが、冷やして液体にして、輸送する。「すいそ・ふろんていあ丸」は、資源水素の輸出大国を目指す豪州から液体水素をはるばると日本に運んできたのである。
このような水素をめぐる日豪の貿易は、水素エネルギーが、化石燃料一辺倒時代のような資源争奪戦にならない、国際貿易の先駆け的モデルとなることが期待される。
今どき ニッポン・ウォッチング Vol.208
早氏 芳琴