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今どきニッポン・ウォッチング

【今どき ニッポン・ウォッチング】大学の生き残り策、キャンパスの都心回帰へ?!

 日本各大学の入学シーズンはすでに過ぎてしまったが、自分の希望した大学であろうと、滑り止めであろう、難関をくぐりぬけることができた多くの若者にとって、入学は喜ばしいものであろう。これから4年間暮らす大学のキャンパスに第一歩を踏み入れた瞬間、新入学生たちはどのような感想を抱き始めたのか? 特に歴史の長くない新設大学や、古き有名大学でも学部増設のため、止む得なく都心部を遠く離れた地の校舎での勉学は、色々と考えさせられる問題もあるかもしれない。

 二次大戦後、我が国が廃墟のような国土の再建に力を入れてきたのが、人材教育であった。この国策は見事花咲き、わが国の高度経済生長の礎となった。その後、男女教育機会均等の重視や経済の持続発展により、全国各地に特色ある様々な大学が、雨後のたけのこのように誕生し始めた。大学のキャンパスは、広い敷地が必要であるため、新校舎は益々都心から遠く離れた場所に、設置せざるを得なくなってしまった。

 大部分の教職員や学生は、人口密集の都心から大学へ通うのが、非常に不便になってしまった。この様な現象は、新設の大学に限った問題ではなく、元来都心に校舎があった古き名門大学でも、学部増設で同じ問題に直面せざるをえなくなったのである。

 顕著の例を挙げると、中央大学は東京駅から約30キロ離れた多摩キャンパス(東京都八王子市)へ、電車で約1時間はかかる地に、学部の移転をするようになった。多摩地区には既に幾つかの大学が同じ問題で、同地区に大学の新キャンパスを設置している。そのため、都心と多摩地区の朝晩の通勤・通学ラッシュは、大変ものになってしまった。しかも、学生には学割の特典はあるが、交通費の支出は家計にも多額の負担となってしまった。

 一方の教職員側も、少数の若手人員を除いて、実績ある有名な老教授に長時間混む電車に揺れて講義に来てもらうのも、無理が生ずる可能性が多くなってしまった。大学の主な構成員である教授陣と学生双方にとって、大変な時間のロスと経費の増加は、大きな損失であると言える。大学キャンパスの都心から郊外への転出計画は、とうとう初期の効果を収めることが困難であることに気付き始めたのである。

 日本の私立大学の経営は主に集まる学生の数と教授陣の知名度によって左右されてきた。文部科学省の発表によると、18歳の人口は、1992年を境に減少が始まり、昨年は114万人までに減ってしまったため、部分の私立大学の入学者数が入学定員数に満たない事態が起こってしまった。

 上述のような色々な予期せぬ実態の変化により、日本の私立大学が目下直面している喫緊の問題は、寧ろ生き残りをかけた学生の獲得競争に勝たねばならないことが最重要な課題であると言えよう。そのため、先ず大学のキャンパスを出来る限りにおいて、都内回帰への問題を解決することにより、大学の更なる持続発展ができるようになるのか、との期待もあるのである。

今どき ニッポン・ウォッチング Vol.235

早氏 芳琴

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