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日本の「ヤングケアラー」に 明るい日が射すか

日本の「ヤングケアラー」に 明るい日が射すか

 最近、日本の新聞雑誌によく「ヤングケアラー」という言葉が登場するようになった。この片仮名語は外来語を日本語音に訳された言葉であることは分かるが、一体何を指し、何を訴えようとしているかは、直ちに理解するのは難しい。そこで、まず、この言葉が何を意味しているのかを、簡単に説明したい。

 「家族やきょうだいの世話、家事、労働など本来大人が担うべき役割を日常的にしている18歳未満の子」をヤングケアラーと言う。即ち、家族に病気や障害等があるため、それをケアする必要がある時、大人に代わって世話をすることである。より詳しみると、学校を休んで精神疾患のある親の話し相手になる、或いは家事をする、または認知症の祖父母の介護のため、家庭内の様々な手伝いをさせられる子ども達も存在している。

 

 周知のように、日本の少子高齢化現象は世界的に極めて厳しい状況に達しており、それに伴い家庭内において、就学中の中高生や小学生に至る子ども達が、本来は大人が担うべき仕事を、それを代行せざるを得ない事態なのである。このような事態には、家族構成に急速な変化があったことが主要な要因と考えられる。

 日本は、過去長い間儒教文化の影響を受けてきたこともあって、家族が緊密に助け合うのはごく当然のことであるという観念があったために、このような子どもの過度な家族の世話が表面化するのが遅かった、との見方もある。

 一方の子ども達は、自分たちにこのよう実情を然るべき関係組織に相談し、改善の援助を求めることが出来るのを知らずに過ごしてきた。近年、この様な実情を改善し、子供たちに本来あるべき権利を取り戻すべきであるとする世論が、強くなってきた。

 

 今年4月の全国的な「ヤングケアラー問題」に関する実態調査によると、公立中学2年の5.7%、全日制高校2年の4.1%が家族の世話をしていると答えている。その中で家族のケアを「ほぼ毎日」する中高生は5割弱程もあった。平均1日で世話に費やすのが「7時間以上」も、1割を占めている。

 家族の世話が日常化すると、子ども自身はケアラーだという自覚を持ちづらく、「普通の手伝いのつもりだった」と話す子どももいる。そして家族を世話する中高生のうち5〜6割は他人に相談したこともなく、学校の側では個別の家庭内問題として見過ごし、また、介護や障碍者福祉などの支援機関では認識が広まっていなかったという面もある。

 

 家族の人手不足を支えたい思いも大事ではあるが、この子供が教育を受ける権利は日本国憲法上でも保障されている。子どもの学校生活に支障や進路選択が狭まる状況になるのであれば、子供の本来的権利がないがしろにされていることになる。

 幸い、日本には既に各種の社会福祉政策が成立しており、さらに、政府も全国的な実態調査を踏まえて、支援策拡充へと動き始めている。このような福祉政策拡充の新たな展開により、「ヤングケアラー問題」は自ずと解決の道が開かれることが期待できるだろう。

今どき ニッポン・ウォッチング Vol.207

早氏 芳琴

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