児童が医療従事者に 千羽鶴贈呈の効能
ある小学校の全校児童約128人が、真心込めて折った色とりどりの千羽鶴を、学校の近くの病院長さんに手渡すのを見た人々は、感動で今にも涙がこぼれ落ちそうだった。この病院は今、満杯に近いコロナ感染者を収容し、重傷患者の救命に尽力している。そしてこの病院の近くにあったのが、埼玉県東部の幸手市立さかえ小学校だった。
一羽一羽の千羽鶴には、子ども達が手書きした医療従事者への暖かい感謝と励ましの言葉が記されていた。
実は、この活動の始まりは昨秋の朝会で、当校校長中沢智弘先生が子ども達に「身の回りで暮らすみんなが『元気に』『楽しく』生活できるために、自分たちに何ができるのか」と問いかけたのがきっかけであった。
時は学校の3学期が始まったばかりで、まさにコロナ禍の第三次緊急事態宣言が出された時でもあった。同校の児童会が直ちに話し合った結果、学校の近くにある東埼玉総合病院で働く医療従事者が毎日非常に忙しく働いている姿や、鳴りやまない救急車のサイレンの響きを思い浮かべ、自分達は小さな事しか出来ないが、彼らに何か心のこもった感謝の意を伝えたいと考えた結果、小さいボランティア的な組織を作ることにした。それが『ぽかぽかハートプロジエクト 絆を深める、ちょっとボランティア』というグループの誕生であった。
コロナ禍の蔓延で、学校の休校の時間が多くなって来たのと、子ども達にはお金に余裕もないなかで、いかにこの時間を有効に利用すべきであるかを考えた結果、千羽鶴を折ること、そして感謝の言葉を一羽一羽の鶴に書き込み、それを医療関係者に直接手渡すことが自分たちの最大限できること考えるに至ったのである。
仕事の分担は、低学年生は一人1日5~6羽ずつ、高学年の6年生は13羽ぐらい、学習に絶対影響させないことを原則に、自宅にいるときの空き時間を利用して真心を込めた鶴を折り、その上に感謝や励ましの言葉を書き込むことを最終的に決めたのである。
これら千羽の折鶴は約2メートルの凧糸に繋ぎ付け、児童会の代表が病院へ持って行き、医療関係者に直接届けることにしたのである。それ以外に、子どもたちが真剣に千羽鶴を折っている光景や感謝の文字を書きこんでいる写真も付け加えた。
子ども達はこのボランティア活動を通して、医療従事者に心温まる感謝の意を直接伝えることが出来たこと、同時に、自分たちが現場で医療従事者が如何に患者に寄り添い、病魔と闘っている実情をも直接聞くことも出来たのは大変貴重な経験であり、有益であったと満足していると言う。
さらに、これら児童たちの自主的なボランティア活動が、医療関係者に対する偏見や差別視を無くすという学習効果もあった、と評価する教員もいる。
今どき ニッポン・ウォッチング Vol.204
早氏 芳琴