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今どきニッポン・ウォッチング

ペットのための神社がある?!

ペットのための神社がある?!

 日本の神社仏閣の穢れや清浄(しょうじょう)に関する伝統的観念には、元々非常に厳しい禁制があったが、時代の趨勢に伴い、近年、急激な変化が見られるようになった。一番顕著な例が、犬猫が神社や仏閣の庭に入ることができるようになってきたことである。

 少子高齢化が進むにつれ、ペットを家族の一員と見なすのが先進国では一種の風潮となっている。ペットを我が家の家族の一員として、大切に寵愛する人たちも珍しくない。一緒に寝起きし食事も共にすると、お互いの間には、人間と動物という異なる生き物という感覚は、徐々に消え去ってしまうほどである。

 健康維持のために、朝夕の散歩に愛する「わが子」を共にすれば、この上ない至福のひと時であるにちがいない。時には近所の神社仏閣に立ち寄り、自分とペット双方の無病息災と健康長寿を祈願したい、と願う人たちも増えている。

 しかし犬猫が境内の広い庭で自由に走り回りることが出来るようになると、自然と汚物は至る所に排泄される。これは飼い主による処理の責任があることは周知のようではある。

 一方の神社や仏閣は、神を祭る神聖な場所には、如何なる穢れがあっても絶対に許されるものではない。しかもそれが四本足の動物の排泄物となると、尚更許されるものではないのである。これこそが、日本の揺るぎない長い伝統であり慣習である。

 

 この長い伝統が遂に、時代の変化により、風穴が破られてしまったのである。最初の妥協案として現れたのが、元来の神社の傍に新たな犬猫専用の神社を建てることである。その神社の名は、「伊奴寝子神社」(イヌネコ神社)と称され、鳥居をくぐると小さなお宮に賽銭箱があり、両脇には犬と猫の石像も据えている。この神社は今も神奈川県座間市に実存している。

 その他では、東京都新宿区の市谷亀岡八幡宮には、ペットの七五三を行う神社もある。排泄を終えさせた後で、飼い主の膝に載せていれば、拝殿で祈祷を受けられる。晴れ着や袴で盛装した犬や猫が年々増え、昨年には150匹以上の犬猫が、神社で七五三の祝いを行ったと言う。初詣もペット専用の日が設定され、祝うことができる神社もあると言う。

 

 少子高齢化が急速に進むにつれ、ペットは家族の一員であるとの思いが広まるにつれ、古き社会の価値観が変化するのは止む得ないことであろう。しかし、上述の犬猫を神社仏閣の庭に迎え入れる現状はあくまでも、一部の特殊なケースに過ぎず、全国約8万社の神社を統率する神社本庁では、『排泄する動物を境内に入れないのが一般的』であることを強調している。

 海外にも多くの日本式の神社がある。愛犬をそこにも連れてゆきたい時は、現地の神社責任者に前もって問い合わせすることをお薦めしたい。

今どき ニッポン・ウォッチング Vol.179

早氏 芳琴

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