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今どきニッポン・ウォッチング

「内視鏡」で地震深層部の「巣」に挑む

「内視鏡」で地震深層部の「巣」に挑む

 日本列島は地理的に、ちょうど太平洋プレートとフィリピン海プレート両方から押されて盛り上がった山脈の背骨の上に位置しているので、地震が多発する形状になっている。そのため、この国では、人々が産声を挙げた時から、地震は日常茶飯事的に体験し、その恐怖と苦難は蓄積されてきた。 

 近年に発生した大地震において、1995年に起きた阪神・淡路大地震では、建物の崩壊で、多くの人が亡くなった。また、2011年の東日本大震災では、建物の倒壊による被害は比較的多くはなかったが、地震による大津波で多くの人が犠牲になった。 

 人々は、自然大災害に直面しながらも、終始一貫して一言も「天を憎み人をとがめる」ことなく、涙を飲み込み協力し合い、一日も早い復興のために、黙々と汗を流し歯を食いしばりながら、世界各国からの賞賛や敬意、同時に暖かい支援をバックアップにして、再建を成し遂げてきたのである。 

 

 歴史的に悲惨な地震の教訓を経てきた国民は、今後また起こり得る地震の災害を、出来る限り最小限に抑えることが出来るようにと研究を重ね、その結果、近年は世界の地震対策の先進国として認められている。 

 その一大功績には、大きな地震に耐えられる建築技術や土木技術の研究開発によって、大規模建造物が大きな地震にも耐えられるように設計する、耐震技術の開発である。他にも、センサーによる地震の前触れの動きをいち早く感知でき、「緊急地震速報」を発する技術の開発等々、地震予知の面にも大きく貢献できるようになった。 

 地震多発国としての強い使命感を抱く国として、各国の期待に応えるために、巨大地震の事前予知がより正確に出来る態勢の研鑽にも余念がない。その具体例が、日本の海洋研究開発機構などの研究チームが、紀伊半島南東沖の南海トラフに近い水深1900メートルの海底に掘った穴で、岩盤のひずみなどわずかな地殻変動を捉える研究を始めたのである。これは日本近海の巨大地震の「巣」である海域の地殻活動を把握し、地震予知の手がかりの確度をさらに高める目的の研究である。 

 この研究は、深海の海底に掘った穴に、ごく微小な地震も検知できる地震計の設置により、岩盤のひずみや傾きを判別し、同時に温度変化で水の動きも感知し、基地局にリアルタイムにデータを送るのである。 

 他方で、この海底周囲には既に20個の他の計器が備え付けられており、水圧の変化や地震の計測が続けられているが、今回の様に穴を掘って設置することで、地震の「巣」にいわば「内視鏡」を入れることにより、地下深くに何が起きているかをより正確に知ることが出来るようになると見られている。 

 このような進化する探査技術によって、将来には地震の前兆をより確実に捉えることが期待されているのである。

今どき ニッポン・ウォッチング Vol.178

早氏 芳琴

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