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【今どき ニッポン・ウォッチング】「純木造」高層ビル建設に挑む 日本の建築業
近年、日本の大都市近郊での住宅建設販売会社が建てる一般的な住宅は、3階建てになってきているようである。以前から販売されている2階建ての住宅とは異なり、多くが1階高く作るようになったのが現状のようだ。それは都市近郊で住宅を建設できる土地が少なくなってきているため、住宅の空間を広げるには、上の方に向け空間を拡大するしかなかったからであろう。大都市における高層ビルが林立するのも、このような不可抗力の制限があったからであろう。
去年、日本の代表的な大きな建築会社である大林組が、横浜市の神奈川県庁付近のオフィス街に建てた一棟の高層ビルがあった。このビルの特色は、すべての建築材料が「純木造」であるため、大変多くの注目を受けるようになった。
この「純木造」の高層ビルは11階建てで、高さは約44メートル、純木造の耐火建築物としては、日本では最も高い建物となった。ちなみに、現存する日本最古の木造建築としてよく知られている、法隆寺五重塔の高さは約32.5メートルである。
このビルは全部が純木造の建築物であるためか、ビルに入るとさわやかな香りがマスク越しでも伝ってくるのである。そのため、ビル全体の空間に木のぬくもりを感じさせられるのが最高に歓迎されているようである。
発表によると、このビルに使った木材は約1990立方メートルで、6~7割はすべてが国産材であるという。そしてこのビルから排出する二酸化炭素の量は、鉄筋コンクリート造りのビルの約4分の1に過ぎず、鉄骨造りのビルの約半分ほどに抑えることができるというのである。
ビルの耐震性を高めるために、柱や梁などは、十字形のユニットをつなげて造っている。それから強度を高めるため、特殊な木材を使い、3層構造にした以外に、免震作用の効果も組み合わせていたというのである。
耐火性についても色々と工夫して、基準の数値を満たしている。そして同社は国内では初めて3時間の耐火性能を持つ木の柱を開発したともいうのである。
同社の関係者が言うには、この「純木造」の高層ビル建設の問題点は、技術やコストをかけて建設できたが、まだまだ量産は見込めないのが実情である。
特に日本のような地震多発の国土から考えるなら、安全面にはさらにより多くの配慮が必要となってくる。そのため、先ずは必用の多い五階建てのビル建設に力を入れ、すべての問題点が出尽くし、解決できてから本格的な純木造の高層ビル建設へ本格的に着手すればよいのではと思うのである。
今どき ニッポン・ウォッチング Vol.258
早氏 芳琴