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【今どき ニッポン・ウォッチング】子牛1頭、1100円でも売れない ウクライナ侵攻と日本酪農家の苦難
日本の酪農家はウクライナ情勢の影響をうけ、目下、二重三重の苦境に陥っている。乳牛への飼料代は高騰し、牛乳は冬場の影響で消費は低迷で、子牛の値段も大幅に落ちこんでいるからである。
「ホルスタインの雄、一頭1千円、ほかにないですか…」との声が響き渡った。去年暮れ、日本の家畜市場で有名な熊本県家畜市場では、大人の腰ほどに大きくなった子牛のセリ場における値段を見て、その悲惨な状態をビックリしない人はないようである。往年は1頭平均約4万5千円ほどであつたのに、今年は税込みでもたったの1100円までに急落してしまった。
そもそも乳牛は、子牛を生んだ後には乳を出すようになっている。そのため酪農家では、常にほぼ一定数の子牛がうまれつづけることになる。しかし、雄の子牛は乳牛になれないため、食肉用に売り出されるのである。
ところが、ウクライナ侵攻後はトウモロコシや牧草などの国際価格が上がり、為替相場の影響もあって飼料代が全体的に高騰したこともあって、畜産農家にとっては、採算が合わなくなってしまったのである。
ホクレン農業協同組合連合会(北海道)によると、飼料高に畜産大手の倒産も重なって、道内乳用牛の子牛の価格は一時、平均1万円を切ったこともあったそうだ。
また、乳牛1頭が1日に食べる飼料は約45キロほどで、今まで1頭当たり1日約1500円ほどの飼料費が掛かっていたものが、このところでは2500円ほどの高騰になってしまったという。
こうなると、月には100万円単位でコストが積みあがっていくのである。加えて、もともと寒い時期は牛乳の消費が減るうえ、年末年始は給食もない。その一方で、牛は夏よりも乳を出すし、自然に出る乳を止めるわけにもいかない。
我が国は早くから飼料高騰分の一部補填を盛り込むことを決定していた。そしてこれ以外にも、酪農家に対いしては、できる限りにおいて、支援を惜しまない決意があったようである。
またこれ以外にも、緊急支援対策として乳量の出が少くなくなった牛の頭数を減らした場合には、1頭あたりやはり15万円の補助金を出すことも決めた。至りつくせりの酪農家保護政策が展開されていたのである。
このように見てくると、地球上のいかなるところでも、起きた人間同士の紛争は、誰もが決して避けることができるものではないことが、明確になってしまった。ウクライナの紛争は結果的に全世界に大きな不幸をもたらし、我が国でも甚大な経済的損害を被るようになった。
地球上におけるすべての人々は、この教訓を歴史に明記すべきであろう。
今どき ニッポン・ウォッチング Vol.254
早氏 芳琴