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今どきニッポン・ウォッチング

新型コロナ禍にみる 老舗百貨店の新たな販売戦略

新型コロナ禍にみる 老舗百貨店の新たな販売戦略

 日本の百貨店の稼ぎ時は、毎年の年末と新年に行う各種の催しやお歳暮、さらに様々な名目の特売等であり、これらによって膨大な売り上げがあることはよく知られている。日本には、慣習として、通常は一年に2回のボーナスが、雇用主から被雇用者に支給される。そのため、この時期になると多くの人々の購買力が高まるため、百貨店も当然この恩恵に恵まれ、商売繁盛となるのである。

 目下、世界的に新型コロナが蔓延している状況下では、外国からの観光客は大幅に減少し、百貨店としては主な売り上げを、国内の売り上げに重点を置かざるを得なくなった。そこで百貨店は販売企画に工夫を凝らし、例年と同様な収益効果を生む必要性に迫られた。

 日本では、昨年2月頃から、諸外国と同じように、新型コロナウイルスの感染が広まった。最大規模の諸外国のコロナ禍よりは数量においては桁違いに少ないとはいえ、今日に至ってもまだ終息の気配を見出すことが出来ないばかりか、逆にますます拡大の趨勢となっている。そして多くの諸外国と同様に日本の経済活動も昨年春以降の停滞趨勢は深刻さを増している。このような状況にあって、百貨店としては年末年始の営業成果に大きな期待を掛け、何としても確実な成果を収めなくてはならない境地に至ったのである。

 日本を代表する老舗の百貨店、三越伊勢丹ホールディングスの新宿本店では、それまで富裕層を対象にしてきた「外商」の販売方式を、スマートフォンの通話アプリ「LINE」を活用した通信による新販売促進政策に切り替え、長年誇ってきた顧客との対面商談方式を転換せざるを得なくなったのである。また、コロナ禍における訪日外国人客の著しい減少による、売り上げの減少分を補うため、国内の裕福層の顧客に対する販売促進にも重点を置くことになったのである。

 一方の老舗、高島屋は、コロナ禍の各種制約状況下にあって、年末年始の商戦でも、全ての顧客の要求に対処できる体制を整えると共に、感染予防にもしっかりした取り組みに重点を置く方針を堅持することにしたのである。  

 他方で、正月慣例の福袋の販売では、昨年までの非常に混雑な状態はコロナ禍の現状では不適当とし、今年からは各店舗においての販売に先立って、インターネットによる予約販売を取り入れることにした。福袋の予約販売は、昨年12月上旬から受付を開始し、中旬以降、または今年の1月4日以降に各店舗で受け取ることになった。この方式により、初売り恒例の福袋販売には、多くの顧客が一斉に集まる状態が回避されたのであった。

 百貨店の上層部の中には、例えコロナ禍が近い将来に終息するとしても、日本の百貨店が完全に元の状態に戻るのは、再来年でも難しいだろうと、悲観的な見通しもある。そこで、百貨店の規模を見直す必要性から、現状の規模を縮小し、余ったスペースをオフィスやショールームなどに切り替える方が得策であろうといった新しい構想も浮上している。

 このように、コロナ禍の行方が不透明な中にあって、コロナ後の「新しい生活様式」を模索するという、いわばポジティブな姿勢が、百貨店の中にも垣間見られるのである。

今どき ニッポン・ウォッチング Vol.196

早氏 芳琴

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