旅は呼んでいる
「“シグナル8”が発令されたらお店は全て閉まるから、水と食料は確保してね」。2018年の台風22号直前、香港在住の知人がアドバイスをくれた。会社も学校も交通機関も休みになり人命が最優先になる、と。
香港を訪れた理由の一つは、ずばり夜景。日本では昔から“百万ドルの夜景”と名高いが実際にはどうだろう？まずはリッツカールトンの118階にあるバー、OZONEへ。内装は近未来的雰囲気で、テクノかハウスが流れてきそうなクラブのよう。地上約500mからの景色は天候にもよるだろうが、少々ガスで曇り霞んでいた。観光の定番ヴィクトリア・ピークの長所は、最も栄えている九龍と香港島エリア両方の全景が見られる。ただし、やはり高度があるせいかモヤモヤしていた。個人的には九龍側から香港島側を見るのが一番のオススメ。地上なのでガスの影響が少なく、水面に反射して映る高層ビル群の光がくっきり見えて美しい。スイートルームが高層階でなく中間あたりに位置するホテルもあると聞き納得した。
また、今回は中華料理の食べ歩きも非常に楽しみにしていた。XO醤の発祥店であるスプリングムーン、福臨門、台湾に本店がある小籠包チェーン鼎泰豊など数軒回り、これだ！と感動したのはミシュラン二つ星を獲得している新同樂。海老のあんかけ焼そばやフカヒレ餃子が絶品、他の物もハズレなし。
なお、ペニンシュラは言わずと知れた五つ星ホテルで優雅なエントランスやアフターヌーンティが有名だが、激動の歴史の証人でもある。イギリスの植民地時代、建設中の敷地には砲座が置かれ開業したものの、太平洋戦争中には日本軍により『東亜ホテル』と名称を変えている。
香港は今回のコロナ騒動においても空港と鉄道駅での検温、そして在宅勤務の奨励と対応が素早かった。冒頭の台風時のように政府も国民も非常事態に慣れているからというのも大きいと思う。昨年は大規模なデモもあり大変だったが、次はぜひ蘭桂坊（ランカイフォン）というクラブエリアにも足を運んでみたい。
●加西 来夏 （かさい らいか）
映画は年間100本以上視聴、訪問国は39ヵ国〜の旅する映画ラヴァー／大きな台風を経験したことがなく不安でしたが、幸い部屋に篭っていて被害なし。ただ香港特有の細長いビルのせいで地震かと思うほど揺れを感じました。
（日刊サン 2020.5.29）
