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ヒカルのハワイ島日記

父への手紙

父への手紙

 「手紙を書いてほしい」と、日本に住む母から頼まれた。

 少し前に父が体調を崩して入院し、その後療養施設に移っていたのだが、そこにコロナウイルス騒ぎが勃発。全面的に面会が禁止されてしまった。

 幸い、危機的状況などではなく、けっこう元気なので、誰にも会えないと退屈らしい。面会はできないけれど、手紙は受け付けてくれるとのこと。オンライン面会というのもあるらしいが、我が両親はいまだにインターネットの無い生活を送っているので、いまさら操作なんかを覚えるのも面倒なのだろう。

 しかし、あらためて父に手紙とは、いったい何を書けばよいものか? 父はアメリカ人並に社交的で、見ず知らずの人にもすぐに話しかけるような人物である。かしこまった会話というのは、例え手紙の中でもなんだかムズムズしてしまう。母は「別になんだっていいよ」と言った。なんでも、私の姉(双子の)は、すでにバンバン手紙を送っているそうな。なぬ? そんなこと知らなかった。

 姉に確認したところ、「週に2通くらいかなあ」との答え。いったい何を書いているのかと尋ねると、「この前はスバルレオーネを描いた」という。手紙を「書く」というか、「描」いていたわけですね。「手紙」というか、「絵手紙」ってとこか。しかも、そんじょそこらの絵手紙ではない。なにしろ姉はプロのマンガ家なのである。 「お父ちゃんが乗ってた歴代の車は全部描いたよ。歴代の猫も。あとは上毛三山とか、近所の橋とか、庭の松とか、いろいろだね。よし、描けた!」

 私としゃべっている間に、姉は新作を完成させた。そしてすぐさまオンラインで写真を送ってくれた。今回は姉の飼っている猫の絵だった。色まで塗ってある。さすがプロ、見事な出来栄えである。

 この手紙に対抗するには、どうすればいいのか? これはもう、「ハワイ」で攻めるしかない。私はさっそくハワイのポストカードを探しに出かけた。

 ところが、ハワイなポストカードというのは、思ったよりもステキなものがない。イマドキは需要が少ないので、もはや力を入れていないのだろうか。古い写真が多く、何度も使いまわしているようで印刷の質も悪い。私はヒロの町を歩き回り、なんとか「これだ!」と思えるものをようやく3枚手に入れた。

 さて、いざ手紙を書こうとしたら、ポストカードというものは、ほとんど余白がないんですね。高齢者なので、あまり小さい字も見づらいだろうし。結局、簡単なあいさつ程度になってしまったけれど、まあいいか。私が住んでいるところの雰囲気は伝わるであろう。

 10日後、母に確認すると、私の手紙はまだ届いていなかった。通常なら1週間以内に届くはず。コロナの影響で遅れているのか?「おまえの手紙やから、地球を反対まわりしとんのんちゃう?」と夫。反対まわりしてはアカン!

 2週間を過ぎて、ようやく私の手紙は到着したのだった。よかった。後続の手紙も、寄り道せずに無事に着いてほしいものである。

No.199

相原光(アイハラヒカル)

フリーランスライター&翻訳

群馬県出身、早稲田大学卒業。2008年結婚してハワイに移住。夫は寿司シェフ。2012年4月双子猫パンとマーチを連れてハワイ島に引越。8月に玄米寿司とムスビの持ち帰り店「DRAGON KITCHEN」を夫婦でヒロにオープン。現在ライター兼寿司屋のお手伝いとして活動中。姉は漫画家の花福こざる。

http://ameblo.jp/hikaruhawaii

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1 コメント

  1. 久しぶり~。かなり久しぶりに見てみたら・・・
    久しぶりというか何年ぶりというか・・・元気そうで良かった。
    姉も元気そうだね。こんな世の中になってしまって・・・二人が元気そうでほっとしたよ。

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