おススメのパンデミック文学
前回のコラムから2週間、世間は大変なことになっている。家でおとなしくしていることが推奨されているので、今回はこの状況で読むのにピッタリのおススメ本をいくつか紹介します。
『首都感染』高嶋哲夫
「コロナウィルスを予言していた書」として最近話題になっている作品。サッカーワールドカップが開催されている中国で、致死率60%の強毒性インフルエンザが発生! 世界が大混乱におちいるという恐ろしい物語です。「そもそもインフルエンザウィルスとは何か?」「WHOって何をしているところなの?」「ワクチンってどうやって作るの?」 などなど、意外と知らない医療現場の状況が細かく描写されているのが面白い。中国から新種のインフルエンザが発生するというのは、専門家には想定内の出来事だったらしい。「そこまで分かってるなら、もっと早く言ってよ!」と思ったが、平和なときに何を言っても皆聞かないものなのですね。なるほど。パンデミックについて、とても勉強になりました。まさに今読むべ作品!
『ペスト』カミュ
ノーベル文学賞作家が描く、傑作パンデミック作品。舞台は1940年代。アフリカ北部、アルジェリアのオラン市で突然ペストが発生する。1匹のネズミの死から始まる壮絶なペスト攻防戦を描いています。一気に感染が広がっていくさまが、実に鮮やかに描写されていて怖い! 閉鎖された環境で、何が起こるかよく分かる。人間というのは事実をなかなか受け入れないものなのですな。パンデミック中に儲かるビジネスというのも興味深かった。ちなみに、アルジェリアが独立したのは1962年。40年代はまだフランスの植民地でした。カミュはアルジェリア生まれです。
『スタンド』スティーヴン・キング
モダンホラーの巨匠の超大作。致死率99%の超悪性インフルエンザ「スーパーフル―」によって、全米は突如死の国と化する。しかし、そんな状況でも生き残った人がいた。生き残った人々の闘争を描く傑作大長編。せっかく生き残ってもこんな恐ろしいことに対面しなければならないとは……。生き残った人が全員善人とは限らないとか、機能が停止してしまった都市で必要なのは先人の知恵だったりとか、なるほどポイント満載。とにかくものすごい勢いでグイグイ引き込まれるので、読みだしたら止まらなくなること必至。
というわけで、こうなったら読書でも楽しみマショー!
No.191
相原光(アイハラヒカル)
フリーランスライター&翻訳
群馬県出身、早稲田大学卒業。2008年結婚してハワイに移住。夫は寿司シェフ。2012年4月双子猫パンとマーチを連れてハワイ島に引越。8月に玄米寿司とムスビの持ち帰り店「DRAGON KITCHEN」を夫婦でヒロにオープン。現在ライター兼寿司屋のお手伝いとして活動中。姉は漫画家の花福こざる。
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