土曜日、家に着くと「にゃー」という声が聞こえた。うちの猫たちの声じゃないというのはすぐにわかった。声がしたのは家の外。我家の猫は家猫なので、外に出ることはない。家に入ると、猫2匹はいつも通り私を出迎えてくれた。

　空耳だったのかな？ と思ったら、また「にゃー」という声。やっぱり近くに猫がいるみたい。毎日遊びにくる隣の家の猫の声とは違う。近所の猫がウロウロしてるのかな？

　この日は大雨。すでにあたりは暗くなっていた。夕飯の準備などをしていると、またしても「にゃー」という声が聞こえてくる。かなり近い。この雨の中、いるとしたら軒下しかないよなあ。外に出て確認してみたけれど、猫の姿は見えない。軒下にはゴチャゴチャとモノが置いてあるし、暗すぎる。電気をつけてみても、やっぱりよくわからない。

　家の中に戻ってしばらくすると、再び「にゃー」という声。やっぱりいるんだな。私が外に出たから、きっとびっくりして黙ったんだな。どうしよう？ お腹がすいているのかもしれないけど、外に出ると逃げちゃいそうだし。でも、鳴いているってことは、なにか用事があるのかも。

　どうしたものかと考えていると、ほどなく夫が帰ってきた。事情を報告すると、また「にゃー」という声。夫はヘッドライトを装着して捜索にかかった。暗すぎて大変だったけれど、何度か捜索したのち、バケツの影に小さな姿をようやく発見。やっぱり猫だった。それも、ものすごく小さい子猫である。生まれてから1か月から1.5か月くらいといったところ。小さすぎて物陰に入ってしまうとぜんぜん見えない。

　おそらく腹が減っているのだろうということで、夫はキャットフードをちょっと水でのばしてやわらくして持っていった。ついでに小さい段ボール箱にタオルを入れて、そばに置いた。雨はひどくなるばかりで、今夜はかなり冷える。箱に入っていたら寒さもしのげるであろう。

　少したって夫が確認すると、子猫は箱に入っており、ご飯も全部食べてあったとのこと。夫はいそいそとお代わりを持って行った。夫は動物には極めてやさしい動物おじさんなのである。

　いったいどこから来たのかな？ ちょっと冒険してたら雨が降ってきて、帰れなくなっちゃったのかな。それにしても、隣近所はけっこう距離がある。1軒の敷地が1エーカーだから、隣の家といっても見えないし、子猫が気軽に遊びにこれる距離とも思えない。

　結局、子猫は我が家で一泊した。飼い主は心配しているのではないだろうか。写真を撮って近所をまわろうかと思ったけれど、子猫は警戒していてなかなか姿を見せてくれない。その日の午後、我々がちょっと出かけて帰ってきたら、姿を消していた。雨が小降りになったから帰ったのかな？

　ところが、このチビ助は、夜になったらまた戻ってきたのである。あんた家に帰らなくていいの？

　その後数日、チビ助は我が家を拠点にして活動しているのであった。お隣さんは心当たりがないそうで、ううむ、どうしたものか。迷子のチビ助よ、あなたのおうちはどこなのよ？