55日目の奇跡
カメラが壊れてしまったのは、6月10日のことだった。シャッターボタンを半押ししてもピントがあわず、写真が撮れない。原因は不明。機種はキャノンの一番初心者向けの一眼レフカメラ(EOS Rebel t6i)で、確か500ドル以下だったと思う。
ハワイ島にはキャノンのサービスセンターなんてない。どこぞに郵送して直してもらうことになる。時間もお金もかかるんだろうなあ。ああ悲しい。何が悲しいって、カメラを使えないことが最もつらい。何しろ毎日持ち歩いているので、カメラというより「相棒」なのである。
すっかり忘れていたが、購入時に 保険に加入していたことが判明。3年の保証期間に間に合ったので、修理費用の心配はなくなった。手続きはネット上で簡単にできた。あとは、発送用のラベルが届くのを待つだけ。
ところが、10日経っても音沙汰ナシ。コロナの影響で遅れているのかなあ。「チャット問い合わせ」をしてみたら、「再送付するので5〜7営業日待て」との指令。
だがしかし、2週間待っても音沙汰ナッシング。再び問い合わせようとしたものの、なぜかチャット画面にもたどり着けない。
「人間には見られないサイトだったんちゃう」と夫。神さまや妖精さんしか入れない画面だったので、「なんで人間が入って来れたんだろうねー?」と、今ごろ話題になっているのかもしれんとのこと。
そうこうしているうちに、私はバケーションに入ってしまい、モヤモヤのうちにさらに2週間が過ぎ去った。いいかげんなんとかせねば。意を決して問い合わせを試みると、今度はほどなくチャット画面を発見。コトの経緯を伝えた。チャット担当さんは、「まだラベルが届いていないなんて驚きです!」と述べた。こっちの方が驚きだよ!
すぐに再送付してくれることになったが、チャット担当さんは気を利かせてくれて、チャット上でラベルを送ってくれた。「こんなことができるなら、始めからやってよ!」と思ったが、そんなコメントは無粋というもの。私は深い感謝を伝え、会見を終えたのであった。
ようやく梱包できる。その前に、もう一度カメラを確認しておこうか。電源を入れてシャッターを半押ししてみると、ピピっという聞き慣れたビープ音が聞こえた。そのままシャッターを切ると、写真が撮れた。ちゃんとピントもあっている。ナニコレ、どゆこと?
猫たちにピントを合わせてみたが、こちらも成功。ちゃんとかわゆく写っている。念のために、庭に出て遠景も撮ってみたが、ちゃんと撮れている。見間違いではない。直った!
カメラが、なぜか直ってしまった。電気製品にも自然治癒力ってあるのか? 奇跡だ! というわけで、私の相棒は復活をとげたのであった。
ときは8月4日。クレームの提出から、実に55日が経っていた。てけてん。
No.200
相原光(アイハラヒカル)
フリーランスライター&翻訳
群馬県出身、早稲田大学卒業。2008年結婚してハワイに移住。夫は寿司シェフ。2012年4月双子猫パンとマーチを連れてハワイ島に引越。8月に玄米寿司とムスビの持ち帰り店「DRAGON KITCHEN」を夫婦でヒロにオープン。現在ライター兼寿司屋のお手伝いとして活動中。姉は漫画家の花福こざる。
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