5月の初めのことだった。突然、散歩がしたくなり、休みの日に近所を30分ほど歩いてみた。そこでスニーカーが壊れた。靴の底が部分的にはがれてしまったのだった。ハワイというところは、ゴム製品が異常に劣化しやすい。気候のせいなのであろう。代わりのスニーカーは持っていない。良い機会なので新しく購入することにした。スニーカーを買うのは、実に8年ぶりである。
街で1軒のショッピングモールに行ってみたところ、スニーカーの種類は実に限られていた。私の知らない間にトレンドは移り変わり、今の主流はサイバー調。色は黒っぽいのが多い。ローテク&鮮やか色が好きな私の好みとは、対極ゾーンである。しかし、他に店はない。悩む。
そうだ、イマドキはオンライン・ショッピングというものができるではないか! 試着ができないのはやや不安ではあるが、物は試しで1足買ってみることにした。色はピンク。サイズは6.5。金額は70ドルくらい。通常の配達を選んだので、1週間から10日ほどで到着予定。
これが、待てど暮らせど届かない。アメリカ本土のファシリティを出てから、ホノルルに到着したところまでは軌跡をたどることができたけれど、そこから音沙汰ナッシング。「消息不明なので、キャンセルしますか?」との問い合わせが来た。この注文をキャンセルして「再注文」への切り替えもできるという。嫌な予感が若干よぎるが、再注文を選択。更に2週間待つことになった。
待つこと2週間。また届かない。いったいどうなっておるのだ、オンラインシステムよ。同じ時期に注文した別の物(本とか弦とか)はきちんと配達されているのだが、スニーカーだけが忘れられている。はっきり言ってスニーカーへの情熱も、もう過去の遺物と化している。もうなんでもいいや、履ければ。近所で買おう。という心境に行きついてしまった。
と、そこでようやくスニーカーが到着したのであった。いろいろあったけど、まあメデタイ。さっそく箱を開けて、私は度肝を抜かれた。それはニューバランスのピンクのランニングシューズではあった。だがしかし、わたしの思い描いていた「可愛いピンク」ではなかった。目の覚めるような激烈なピンクだったのである。蛍光塗料が塗ってあるかのように眩しい。
私は再び悩んだ。返品するべきか否か。ようやく届いたスニーカーである。ここで返品して別のものを注文したら、またどれくらいの期間がかかるのか見当もつかない。かといって、好みではないスニーカーを履くだろうか? 結局、返品することにした。返品の手続き自体は簡単だった。もうあまり贅沢を言わず、近所で適当なものを選ぼう。
ところがである、私のもとに、またしてもスニーカーが配達されたのである。前回とまったく同じ、蛍光ピンクのニューバランスである。これはいったいどういうことなのか? 最初に届いた物は、最初に注文してキャンセルした物だったのだろうか? キャンセルされてなかったのだろうか? だがしかし、料金自体はすべて払い戻されている。
というわけで、何がどうなっているのかさっぱり分からない。結論として、無料でスニーカーが1足届いたということになった。8年後にスニーカーを買う時、ハワイ島の流通システムはどうなっているのだろうね?
No.247
相原光(アイハラヒカル)
フリーランスライター&翻訳
群馬県出身、早稲田大学卒業。2008年結婚してハワイに移住。夫は寿司シェフ。2012年4月双子猫パンとマーチを連れてハワイ島に引越。8月に玄米寿司とムスビの持ち帰り店「DRAGON KITCHEN」を夫婦でヒロにオープン。現在ライター兼寿司屋のお手伝いとして活動中。姉は漫画家の花福こざる。
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