華ちゃんからのメール
中学生の華ちゃんが「リト」の本を読んでメールをくださいました。「リト」は私と生命学者の村上和雄先生の共著の本です。
はじめまして。華です。お願いします。9月の初めに学校で友達に「華の声って変わってる。変」と言われたことがきっかけで、声が出なくなりました。最初は教室だけでした。保健室の先生や両親は心配をしてくれました。「華の気にしすぎ」という言葉で、自分の気にしすぎる性格も受け止められなくなって、教室以外でもまったく声が出なくなりました。学校もまったく行けなくなりました。両親と話すのも怖くて、部屋からも出られなくなりました。病院へ行くと精神的なものだと言われましたが、本当に声を出そうとしているのに出ません。友達はみんなが言うように悪気もなかったと思うし、いじめられたわけでもないけれど、その言葉が何度も思い出されて、私は声が変なんだと何度も思いました。私の声って気持ちが悪いのだと思うのをやめられなくなりました。担任の先生が電話をくれましたが、声も出ないので、母親が出ました。先生は「華に渡したいものがあるから家に行くよ」と電話で言ってくれました。でも、先生に会うのは嫌でした。
先生が私にプレゼントしてくれたのはリトという本でした。表紙をあけると、「華のかけがえのない本になると思うから読んでください」と先生の手紙が挟んでありました。そしてリトを読んだら、お腹の底か胸のあたりから、声がこみ上げてきて、こみ上げてきて、うううと言う声が出てきて、あんなに、何度も声を出そうとしても出なかったのに、止められないほど大きな声が出て、泣きました。母がびっくりして飛んできました。こんなことは初めてで、でも悲しい涙ではなくて、感動でもこんなに人は泣けるのですね。私は悲しかったのに泣けなかった。あのときに、泣けばこんなことにならなかったのかもしれません。
本の中で、オリーのママが「リト、リンゴでも水でも、そして何にでも、大きな力は宿ってるの。そしてね、リト。リトにもその大きな力はあるのよ。リトの毛一本一本にもあるの。覚えておいてね。いただいた大きな力は誰かの幸せのためにリトのところにあるの」のところを読んだときに、私は昨日までは死にたいとまで考えていたのに、私は今は、特別支援学校の教諭になりたい。でも村上先生のような生命学者もいいなあと考えるようになりました。私の中にも大きな力はある。心から納得できました。これからも何度も読むと思います。将来の仕事を考えたとき、そのためには学校に行かなければならないと思いました。この人生で、「リト」に出会えたのは幸せです。声が出なくなったこともいつかのいい日のためだと思います。
昨日学校に行けました。みんなが「華、華」と私の名前を読んでくれて、声が出ていた頃と同じような関係で楽しかったです。でも、私は前とは違います。リトが私を強くしてくれたから。スイッチがオンになったと思います。担任の先生も今日はニコニコして見守ってくれました。いつかかっこちゃんや表紙の裏の本物のリトにも会いたいです。 華
私も声をあげて泣きました。リトを通して、華ちゃんに会えて幸せです。先生にも心から感謝しています。
山元 加津子
1957年石川県金沢市生まれ 富山大学理学部を卒業後、特別支援学校の教員と、作家活動をしてきたが、2014年に教員をやめ、2012年に立ち上げた障がいを持つ方もそうでないかたもみんなで幸せになろうと「白雪姫プロジェクト」を立ち上げ、その中で意識障害の方の回復の方法と意思伝達の方法などを伝えている。
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