洋服のお話
さあ出かけよう、と思ってクローゼットを開ける。そして「着るものがない!」と大騒ぎするーもちろん、目の前にはたくさんの洋服が掛けられているにもかかわらず。たくさん、どころか有り余るほどに。そして一通りあれでもないこれでもないと考えあぐねたあげく、時間に迫られて適当な服に、あるいはお気に入りの服に袖を通す……。私は毎日のようにそれを繰り返しています。特に、ちょっと小綺麗な格好をしなければいけない時。長年のハワイでの学生生活で染み付いたTシャツとジーンズ、ビーチサンダルで出来上がり!な思考回路からはなかなか抜け出せないようです。
思えば日本で会社員だった頃は、逆に何も考えずにジャケット、ブラウスとタイトスカート、ストッキング。靴はお決まりの黒のパンプス。まるで毎日制服のように似たようなものを来て満員電車に飛び乗っていたものです。満員電車の中にはおなじような服を着た人、そしてスーツの軍団。外国人からすると有り得ない、没個性だ、と言われても仕方のない景色がそこには広がっていたものです。
一方、ハワイでは会社員の人たちも割とカジュアル。女性ならばワンピースにかかとの低いサンダル、男性ならはアロハシャツにスラックスをさらっと着こなしている人も多く、窮屈なスーツの人はあまり見かけません。それもそのはず、ハワイではアロハシャツ・ムームーはれっきとした正装。仕事はもちろん、冠婚葬祭にだってOKというのは非常に便利です。
ならば毎日ムームーで過ごせばいいのでは、と思ったこともあるのですが、やっぱりいろいろ着てみたいと欲が出るのも、素敵な洋服を見るとつい買ってしまうのも人間の性。コロナで外出機会が減ったこともあり、クローゼットでホコリをかぶっている洋服たちもあるのですが、つい買い物に行くと目で追ってしまいます。
縦にも横にも規格外サイズな私にとって、洋服を選べる選択肢があるというのは、ハワイに来て本当に良かったと思える瞬間の一つです。日本では「大きいサイズ」の専門店に行かなければいけなかったのが、ここでは割とどこでも手に入ります。そして嬉しくなって、つい。そして冒頭に戻るのです。経済を回している、私は経済に貢献しているんだ、と自分に言い聞かせつつも、少しは洋服と脂肪の断捨離をしなければなあ、と思うのでした。
CAN OF ALOHA No.51
金平 薫 (Kaoru Kanehira)
香川県出身、現在はハワイ某所にて武者修行中。 日々のあれこれを、ゆるりとお伝えできたら幸いです。美味しいものには目がありません。 なんでもない毎日は Instagram:kaoru_channel をご覧ください。