ハワイの教育コラム|イゲット千恵子の子供をビジネス脳にする
Vol. 26 世界一高いラーメン屋
現在、ニューヨークに仕事で来ています。ボストンに住む息子が夜中にマンハッタンに到着し、「お腹が空いたのでラーメンが食べたい」というので、ホテルの近くにあった博多で有名な「一蘭」へ行ってみることにしました。夜中だというのに、100席ある座席は、8割が埋まっていました。あの独特の“味集中カウンター”という仕切りのある座席に、息子が「あ〜このラーメン屋か〜」と博多で行ったことあるのを思い出し、席についてメニューを見てびっくり!
普通の豚骨ラーメンが$20くらい、それにチャーシューや煮卵のオプション、さらに替え玉まですると$30という値段!ハワイでも日本のラーメンは$15くらいするので高級だと思っていたが、マンハッタンのど真ん中にある一蘭の価格には、おののくばかりでした。
店内にいた日本人は私たちくらいで、ほとんどの人は日本人以外の人種の若者たちで賑わっていました。私は先週まで博多にいたので、「食べてくればよかった」と思いながら、こんなに値段が高いとなぜか悔しいような気持ちになってくるのです。元を取らねばと思い、「なぜ、この場所でこの値段のラーメン屋が存在するのか?」というビジネス目線で、息子と二人で話を始めました。
一蘭を運営する会社は、もともと会員制のラーメン屋など普通のラーメン屋とは一線を超えたアイデアのある会社です。とくに海外展開での成功の特徴は、合理化されたシステム化にあります。まず入り口には電光掲示板があり、席に着くとランプがつくシステムになっています。100席あまりのカウンターのどこが空席なのか一目瞭然なのです。席に着くと、オーダー用紙に自分で書いてオーダーをします。麺の硬さから味の濃さ、トッピングまで選んで自分で記入するので、ウェイターの注文間違いなども減らすことができます。セントラルキッチンで作られたものを各店で温めて、茹でて、提供することで、日本の味が保たれます。麺の茹で具合も日本と同じでした。そして、この値段で水はセルフサービス、支払いはクレジットカードオンリーでした。
経営者の立場からいうと、クレジットカード決済はカード会社への手数料は高いのですが、現金の扱いはキャッシャーが間違えることもあるので、明朗会計という意味ではカード決済が一番いいのです。ここでも、誰がやっても同じ経営ができるようにするシステムが工夫されていて、海外進出企業として合理化経営のいい例題として息子と話をしました。結局、「世界一家賃の高いラーメン屋だよね」ということで、この値段について納得して帰りました。みなさんも、レストランビジネスは子ども達にとって身近なビジネスなので、こんな話をしてみてくださいね。
(日刊サン 2020.2.7)