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コラム 神楽坂発 お身体へのお便り

【神楽坂発 お身体へのお便り】身体のミニ知識

 12月の半ば頃を24節季では「熊蟄穴(くまあなこもる)」と呼ぶそうです。暗く寒い冬の来る前に充分な栄養を摂って冬眠に入る時期なのです。山では木々が枯れて春の芽吹きに備える姿が見られ、走り続けるのではなく活動と休息のバランスで命が紡がれていることを感じます。

 ヒトの社会を見渡せば、今年も昨年に引き続きコロナ禍、世界情勢の悪化、地球環境の悪化など憂慮することが多い1年でした。活動を休止しない私たちはせめて心が削り取られないように過ごしたいものです。旅行に行ったり、豪華な食事を摂ったりといったハレを求めなくてもかつて読んだ哲学博士の土屋賢治先生の言葉路傍の石からも学ぶことはあるという身の回りの風景から喜びを見出せば、心に栄養を与えることができそうです。古代の日本人は木々や山、巨石などに神を見出していました。自然に敬意を払い、敬虔な気持ちを思い出すことで想像の翼を広げ豊かな心を育むことは祖先からの贈り物かもしれません。健康に関するコラムを書いていますと、どうしてもこんなことをすると身体に悪いといったテーマが多くなます。今年最後のコラムは身体のミニ知識で締めくくりましょう。

 「からだのトリビア教えますー中尾篤典著羊土社」少し古い本ですが私は行き詰った時などに読み返して笑顔になれます。この本の記事から2つご紹介しましょう。

“3秒ルールは本当か?
 食べ物を床に落とした時に「3秒(5秒)以内なら大丈夫」といって拾って食べたことはありませんか。私は自宅であれば30秒くらいなら大丈夫と思って食べることもあります。本当に床に落とした食べ物を食べても衛生的に大丈夫なのでしょうか? 実験によれば53060秒のどの時間でもほぼ同じ菌数が食物に移動するそうです。つまり接触時間が短いからといって安全ではないことが証明されています。

 この先は私見ですが「衛生仮説」によれば、過剰に衛生的な環境で育つとかえってアレルギー疾患に罹りやすいそうで、お子様が落とした食べ物を少しであれば拾って食べさせてもよいかもしれません。世界は菌に満ち溢れているのですから、清潔ばかりが優先される社会もまた不健康かもしれませんね。

七面鳥を食べると眠くなる
 12月はご馳走を食べる機会が増えそうです。米国では11月の収穫祭に七面鳥を食べる風習があると聞きますが、クリスマスにも七面鳥を丸焼きにして詰め物をした食事が供されることもあるでしょう。お腹いっぱいになってソファーで眠る人をTurkey comaと呼ぶそうですが、七面鳥には睡眠を促すトリプトファンが大量に含まれています。因みに最終的に睡眠に移行するためにはトリプトファンから代謝されたメラトニンによります。

 今年も1年間拙文をお読みいただきありがとうございました。来たる年もお健やかに。

神楽坂発 お身体へのお便り No.112

安田祥子   Akiko Yasuda

株式会社jast代表取締役会長 

統括メディカルアドバイザー、フリーライセンスドクター、「農林水産省 産学共同プロジェクト」メンバー

最愛の娘の突然の死をきっかけに、健康は当たり前のものではなく、自らの手で守り育むものと痛感し、分子生物学や医学などを学ぶ。2013年(株) jastを設立し家庭と医療機関を結ぶ架け橋としてのアドバイザー育成に取り組む。これまで200件以上のクライアント様の健康・医療・日常生活のご相談に応えるとともに、教育部門JAMAで主席講師を務め分子生物学の観点から細胞に働きかける栄養素や最新の遺伝子研究など多岐に渡る講義を行う。数多くの機関誌への執、講演会、セミナーなども行っている。

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