庭のベランダで夕涼みをすると、虫の音が聴こえてくるようになりました。秋の扉が開いたのですね。空が高く見えるようにもなりました。空が高く見えるのは空気が澄み渡って透明度が高いからだそうです。高浜虚子の句に“新涼や眼鏡をとりてあたり見る”という句があります。秋を肌で感じ、眼鏡越しでない身近な景色を見渡している虚子の姿を彷彿とさせる一句です。
夏は、利用している眼鏡が汗や脂などの付着で劣化する可能性が一番高い季節です。今回は眼鏡のトリセツをお伝えしたいと思います。
コンタクトレンズが普及しているとはいえ、眼鏡のお世話になっている方は少なくありません。実は眼鏡の適切なケアを怠ると、眼精疲労や視力の低下にも影響するそうです。
例えば、眼鏡のレンズを下にして無造作に机の上に置いたりしていませんか? これはレンズの傷に繋がり、もっての外です。また、車中に眼鏡を放置したままにしたり、サウナやお風呂に眼鏡をかけたまま入ったりしていませんか? 眼鏡のツルやレンズのコーティングは熱に弱いために劣化の原因となり、結果として見えにくさに繋がります。時間が経過するにつれて、眼鏡の鼻あて部分が緑色に変色するのを経験したことはありませんか? 眼鏡に利用される金属は合金が多く銅も含まれていて、その銅が酸化することで緑青と呼ばれる物質に変化し緑色になるのです。経年劣化の目安かもしれません。たかが鼻あてと思われるかもしれませんが、鼻あてが劣化すれば眼鏡が滑りやすくなり、眼精疲労に繋がります。正しい位置で眼鏡を支えるために鼻あてを定期的に交換することは眼のための大切な作業です。とくに遠近両用の眼鏡をご利用の場合にはフレームの歪みや鼻あてのずれがあると本来の機能が十分に発揮できなくなります。鼻あての位置を変えるだけで格段に見やすくなったと感じられる方が多いそうです。曇りとりのためについついしがちなこととして、とりあえず「息を吹きかけ擦る、ウェットティッシュで眼鏡の表面を拭く」ことがあるようです。これは、眼鏡の表面に付着したゴミなどでレンズを傷つけてしまいます。同様に眼鏡クリーナーでいきなり拭いたりすることもご法度だそうです。
眼鏡の正しい洗い方は①こすらずに水で表面についた細かいゴミを洗い流す②中性洗剤を使って皮脂などを洗い流す③軽くティッシュなどで水分を拭きとり、その後眼鏡クリーナーで綺麗にする、の4段階です。日ごろお世話になっている眼鏡を大切に取り扱うことは、眼そのものも大切にすることに繋がります。
私は眼鏡を利用していませんが、眼も加齢とともに劣化する器官ですので、負担をかけないよう心掛けたいと思っております。蛇足ですが、ゴルフなどの紫外線対策で帽子やサングラスをご利用かと思いますが、眼に最もダメージを与えるのは細かい土埃だそうです。
神楽坂発 お身体へのお便り No.109
安田祥子 Akiko Yasuda
株式会社jast代表取締役会長
統括メディカルアドバイザー、フリーライセンスドクター、「農林水産省 産学共同プロジェクト」メンバー
最愛の娘の突然の死をきっかけに、健康は当たり前のものではなく、自らの手で守り育むものと痛感し、分子生物学や医学などを学ぶ。2013年(株) jastを設立し家庭と医療機関を結ぶ架け橋としてのアドバイザー育成に取り組む。これまで200件以上のクライアント様の健康・医療・日常生活のご相談に応えるとともに、教育部門JAMAで主席講師を務め分子生物学の観点から細胞に働きかける栄養素や最新の遺伝子研究など多岐に渡る講義を行う。数多くの機関誌への執、講演会、セミナーなども行っている。
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