新緑の季節が訪れて、庭の木々も花々も優しい風に気持ちよさそうですが、相変わらず世界の行く先が見えない日々が続いています。広い世界での価値観は多様ですが、せめて事実に基づいた情報で判断したいものです。
私たちヒトは偽の情報であっても自分に都合のよい情報ばかりを集めてそれを信じてしまい、事実を歪めてしまう(確証バイアス)傾向があります。普通に考えれば、どうして詐欺などの被害に遭うのかと思いますが、この確証バイアスから逃れるのは案外難しいそうです。ウクライナ侵攻で度々報道されているロシア側の情報について日本のTV番組「報道特集」で事実を検証して、偽情報であると伝えていました。ロシアのプーチン政権が高い支持率を維持しているのも確証バイアスのなせる技かもしれません。「ウクライナ人ってどんな人?」とウクライナの現地取材をしているジャーナリストに尋ねた番組で「ウクライナ人は平和と自由のために命を賭けて戦っている人々です」との答えが印象的でした。侵攻や残虐行為に反対しているロシアの方も世界には数多おられると思いますので、どうか出身国での差別がありませんようにと願っております。
認知バイアスは年齢を重ねた方ほど強くなる傾向にあるそうです。悲しいことに私たちは自然の老化現象として、毎日数千個のニューロン(神経細胞)を失っています。因みに40歳以降、脳の容積は10年で5%ずつ減っていくそうで、脳機能は徐々に低下し、認知症の最大リスクは年齢とされています。
ところが最近の研究では脳は80代になっても新しいニューロンを生み出す能力を維持していることが分かりました。活発にニューロンを生み出すには何が必要なのでしょうか?
- 血流をよくする
- 同じストレスを慢性化させない
- 語彙を増やす
- 早歩きをする
- 背筋を伸ばして座る
- 利き手でない方の手で文字を書く
- 10分間の空白の時間(TV、電話などをシャットアウトする)を持つ、
などが伝えられています。興味のある方は「脳メンテナンス大全一クリスティン・ウィルミア著」をお読みください。東京大学のプレスリリースでは「学ぶほど頭がよくなる仕組み」の解明が報告をされています。
この研究では学べば、学ぶほど記憶に携わる海馬が刺激されて、新しいニューロンの数が増加することが分かりました。学ぶというと私たちは勉強を思い浮かべますが、ヒトとのコミュニケーションから生まれる学びでも読書で得る知識でもよいのでしょう。漫然と過ごすことを見直して生きることを指しているのかもしれません。
「脳の構造は複雑だが、脳を変えるのは簡単」とウィルミア氏は述べておられます。コロナ禍や戦争など様々なストレスに晒されている私たちですが、脳が活発に働ける環境作りをしたいものです。
神楽坂発 お身体へのお便り No.105
安田祥子 Akiko Yasuda
株式会社jast代表取締役会長
統括メディカルアドバイザー、フリーライセンスドクター、「農林水産省 産学共同プロジェクト」メンバー
最愛の娘の突然の死をきっかけに、健康は当たり前のものではなく、自らの手で守り育むものと痛感し、分子生物学や医学などを学ぶ。2013年(株) jastを設立し家庭と医療機関を結ぶ架け橋としてのアドバイザー育成に取り組む。これまで200件以上のクライアント様の健康・医療・日常生活のご相談に応えるとともに、教育部門JAMAで主席講師を務め分子生物学の観点から細胞に働きかける栄養素や最新の遺伝子研究など多岐に渡る講義を行う。数多くの機関誌への執、講演会、セミナーなども行っている。
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