暦は弥生3月に変わりました。2月の後半、東京では三寒四温の繰り返しで体調管理が難しい日々でしたが、柔らかい春風に包まれる3月には道行く人々の足取りも軽やかに見えます。我が家の庭の梅の木にも春を寿ぐように鶯が訪れ澄んだ声を聴かせてくれています。3月には雛の日や卒業式、入学式や就職の準備などお子様のおられるご家庭では特にイベントが盛りだくさんかもしれません。
慌ただしい日々にはどうしても身体のケアが後回しになりがちです。わざわざ意識しなくても簡単にご自宅でできるケアを一つご紹介しましょう。
食事などで摂り入れた栄養素は血管を流れる血液が隅々まで運び私たちの身体は滞りなく各部位で機能を発揮します。血管というと動脈や静脈など大血管系をイメージしがちですが、全身の99%は毛細血管が占めています。道路網を想像していただくと分かりやすいと思います。主要道路が大血管、地域の道が毛細血管です。細部まで届けるための交通網が不備ですと各家庭に物資が届かなくなるのと同じで、毛細血管は生命の維持に不可欠なライフラインなのです。
この毛細血管がダメージを受けてジワジワと劣化が進み数量も減ると全身に不調をもたらします。糖尿病や腎臓病など毛細血管の劣化が進んだ病気に罹患している方では他の疾患も引き起こしやすくなります。毛細血管の劣化は加齢、睡眠不足、ストレスなど日常生活のちょっとした乱れでも起こります。
明るい側面として毛細血管は何歳になっても再生してまた働くことができます。毛細血管の権威でソルボンヌ大学やハーバード大学、現東京医科歯科大学教授の根来秀行教授によれば、毛細血管には残った血管を枝分かれさせて新しい血流を確保する“血管新生”という仕組みが備わっているそうです。私も画像などで確認しましたが、次々に毛細血管が再生されていく様子が映し出されていました。
ではどうやって血管新生を促すのでしょうか?足腰に問題が無い場合には『筋トレ5分+有酸素運動10分』のわずか15分ですので無理なく続けることができそうです。筋トレや有酸素運動(お散歩など)にかける時間が継続的に取れない方や運動が難しい場合には自宅で姿勢をまっすぐキープして立ったまま身体を前後に傾けることでも十分な筋トレだそうです。その時足裏を床につけたまま、腰が曲がらないように注意しましょう。最も効果的な時間帯は17時~19時までの夕刻がお薦めだそうです。
また、血流を増やすには熱すぎず、ぬるすぎず10分間ゆったり入浴しましょう。温度は38℃~41℃を目安にご自身が気持ち良いと感じる温度設定がお薦めです。因みに温度が熱すぎたり長湯だったりすると交感神経が昂り入眠の妨げとなりますので、睡眠の質の低下を招く可能性があります。
これから日本は桜が満開になり美しい光景をご覧になれますので、ぜひお出かけくださいませ。
神楽坂発 お身体へのお便り No.126
安田祥子 Akiko Yasuda
株式会社jast代表取締役会長
統括メディカルアドバイザー、フリーライセンスドクター、「農林水産省 産学共同プロジェクト」メンバー
最愛の娘の突然の死をきっかけに、健康は当たり前のものではなく、自らの手で守り育むものと痛感し、分子生物学や医学などを学ぶ。2013年(株) jastを設立し家庭と医療機関を結ぶ架け橋としてのアドバイザー育成に取り組む。これまで200件以上のクライアント様の健康・医療・日常生活のご相談に応えるとともに、教育部門JAMAで主席講師を務め分子生物学の観点から細胞に働きかける栄養素や最新の遺伝子研究など多岐に渡る講義を行う。数多くの機関誌への執、講演会、セミナーなども行っている。
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