今年の東京は乾燥し、寒さが厳しい日が例年より多く、庭の花々は元気がありません。そんな中、片隅に植えた2本の香り椿の鮮やかさが際立っています。椿は日本原産で万葉集の時代から日本人とともにある常緑樹です。花言葉は謙虚な美徳で一輪一輪凛と咲き、潔く散る姿は私たちに美しい生き方を教えているようにも思えます。コロナ禍にあって、皆マスクをつけ、感染しない、させないという配慮が行き渡っている街の様子は議論があっても他者を意識して心を配る日本人の謙虚さかもしれませんね。
前回は「片足立ち」をお伝えしました。今回は年齢に拘わらず一度や二度は経験した方の多い「ぎっくり腰」のお話をいたしましょう。急性腰痛、いわゆるぎっくり腰は前触れもなく突然腰が急な痛みに襲われることを指しています。そんな時、自分の行動を振り返って何が原因か探ってしまうのは人情ですが、明らかな原因が無くても、例えばくしゃみをしただけで起こることもあります。ぎっくり腰に共通するのは動作に伴って痛みが起こるので例えば椅子から立ち上がったりトイレに行ったりも一苦労です。中には腰を支える筋肉や関節、椎間板まで傷めてしまうケースさえあるそうです。
ではそうした時に何をすればよいのでしょうか? 東京大学付属病院教授の松平浩先生のお話をご紹介しましょう。楽な姿勢がみつかれば、骨粗しょう症やがんの既往歴などが無い限り受診する必要はないそうです。自宅で様子を見る場合、市販の痛み止めを飲み、痛みをやり過ごし早く日常生活に戻ることで慢性腰痛に移行することを避けましょう。痛み止めはロキソニンなどのNSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)が第一選択ですが、腎機能が低下した方、胃腸が弱い方、心筋梗塞や気管支喘息の既往症がある方の場合にはアセトアミノフェン(日本では商品名カロナールや市販のラックル)の方が望ましいそうです。痛み止めにご不安がある場合には医療機関にご相談ください。
また、湿布はどうなのでしょうか? 湿布は痛みの軽減に飲み薬ほどの効果はありませんが、気持ちが良いと感じる場合には利用することもよいでしょう。但し、冷湿布や氷で冷やす場合には注意が必要で、ぎっくり腰の痛みを強めているのは捻挫などと異なり背中のアウターマッスルの緊張ですので、冷やすと筋肉の緊張が高まり痛みが増す可能性があります。また、コルセットはぎっくり腰直後の2日間が良く、4週間以上使用すると腰を支える筋肉が衰えるという研究もあるそうですので、なるべくコルセットには頼らないようにしましょう。
ぎっくり腰にはぎっくり腰トラウマといって痛みに対する恐怖でついつい腰をかばって動かさなくなることで再発することもあるそうです。動かすほど腰痛はよくなる、と思い無理なくしっかり身体を動かしましょう。活き活きした動きは若々しい姿を生み出します。
神楽坂発 お身体へのお便り No.103
安田祥子 Akiko Yasuda
株式会社jast代表取締役会長
統括メディカルアドバイザー、フリーライセンスドクター、「農林水産省 産学共同プロジェクト」メンバー
最愛の娘の突然の死をきっかけに、健康は当たり前のものではなく、自らの手で守り育むものと痛感し、分子生物学や医学などを学ぶ。2013年(株) jastを設立し家庭と医療機関を結ぶ架け橋としてのアドバイザー育成に取り組む。これまで200件以上のクライアント様の健康・医療・日常生活のご相談に応えるとともに、教育部門JAMAで主席講師を務め分子生物学の観点から細胞に働きかける栄養素や最新の遺伝子研究など多岐に渡る講義を行う。数多くの機関誌への執、講演会、セミナーなども行っている。
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