2023年は千支では卯年です。ウサギは子沢山ですので、豊穣や子孫繁栄の象徴となっています。また、飛び跳ねることから飛躍の年とも言われています。私たちヒトは兎のように軽やかな動きができているのでしょうか?
2022年4月にニューヨーク大学から興味深い論文が発表されています。その論文では“ネアンデルタール人と現代人の背骨の形状から腰痛の原因は生活習慣にある”と報告されています。背骨を形成している椎体は産業革命以降徐々に変化し、現代人の背骨に近づいて、その急激な変化によって腰痛を含む骨格筋系のトラブルが急増しているのではないか、とのことです。研究によれば腰痛の発生率が高いのは都市部にお住まいの方で、前傾姿勢で腰掛けることがリスク要因とされていることも伝えられています。産業革命以前の骨格はネアンデルタール人と現代人との差があまり大きくなかったそうです。
腰痛は非常に多い疾患で国際的な疫学調査によれば、実に85%もの方が一生の内最低一度は経験なさっているそうです。厚生労働省の調査でも男女とも自覚症状のある方の割合が腰痛はトップを占めています。50歳を過ぎると体幹の筋肉は概ね1~1.5%ずつ減っていき、特に背中の筋肉(広背筋)は年齢とともに脂肪が溜まり霜降り状態になっていきます。背中の筋肉の衰えに付随して腰痛となります。慢性腰痛の原因がはっきりしている特異的と呼ばれるものより、原因が分からない非特異的と呼ばれるものが多いのが実情とも伝えられています。いくつか腰痛についての疑問に千葉大学整形外科教授の大島精司先生がお応えになっていますので、お伝えしましょう。
①寝返りをうつと腰が痛んで目が覚める
腰をひねることで椎間板に負担がかかるためかもしれません。就寝時には仰向けよりも横向きの方が腰に負担はかかりません。運動(ウォーキングやスクワットなど)も有効ですのでお試しください。就寝前に痛み止めを飲んでおくことも良いでしょう。
②起床時に腰痛がある
就寝時は寝返りを打つにしても回数に限りがあります。長時間同じ姿勢でいるために関節が硬くなり起きて活動性が上がるとお痛みがでますが、疾患ではなく生理現象ですのでご心配には及びません。こうした症状は気温が低くなると特に起こりがちです。
③ぎっくり腰(一過性急性腰痛)
背中の筋肉、椎骨と椎骨を繋いでいる椎間板や椎間関節のどこかで一過性の障害が起こったことによるお痛みで1~2週間で自然に治ります。特に冬場は動きが鈍く関節も硬くなるので起こりやすくなります。お痛みは痛み止めをご利用ください。
“兎死ずれば、狐之を悲しむ”という諺があります。同類の死は自分にも同じ運命が訪れることを指しています。世界が一日も早く平和で健やかになりますように。
神楽坂発 お身体へのお便り No.114
安田祥子 Akiko Yasuda
株式会社jast代表取締役会長
統括メディカルアドバイザー、フリーライセンスドクター、「農林水産省 産学共同プロジェクト」メンバー
最愛の娘の突然の死をきっかけに、健康は当たり前のものではなく、自らの手で守り育むものと痛感し、分子生物学や医学などを学ぶ。2013年(株) jastを設立し家庭と医療機関を結ぶ架け橋としてのアドバイザー育成に取り組む。これまで200件以上のクライアント様の健康・医療・日常生活のご相談に応えるとともに、教育部門JAMAで主席講師を務め分子生物学の観点から細胞に働きかける栄養素や最新の遺伝子研究など多岐に渡る講義を行う。数多くの機関誌への執、講演会、セミナーなども行っている。
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