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デジタル版・新聞

インタビュー

SPARK代表取締役 岩田正志さん

ひとつのものを愛して、それに集中した方が高められる

 

SPARKという名前の由来は、最初お店をオープンするときに色々名前を考えたんですよ。スクリューとか。地元の人に感想を聞いてみたら、“スクリューって首を絞めるみたいな感じでよくないよ”と言われてしまった。

 

それで辞書を調べていったら、SPARKという言葉が目についた。火花が散るという意味ですが、僕の辞書には“洒落者”という意味も載っていたんです。ぁ、これはファッション と繋がるな、と思いました。文字もSPARKと 5文字で並んだ感じもいい。それで SPARKという言葉を選びました。

 

お客さんにもよく意味を聞かれるんです。そういう時は”うちのTシャツを着るとオシャレになるでしょ。だからオシャレさんっていう意味ですよ”と説明しています。火花が散るほどオシャレな感覚で着て欲しい なという気持ちもありますね。

 

SPARKっていう名前は結構あるんです よね。ハワイにもSPARKというストリート があるんですよ。誰かの名前らしいですが。 よくあるのが、”ボクの名前はSPARKっていうんでず という外国人の方ですね(笑)。 それで気に入ってくれて、毎年ハワイに来 たらTシャツを買っていますという方もいま す。

 

SPARKSという名前のバスケットボールル ームもあるんですよ。ロサンゼルスの女子のチームなんですが、そのオーナーさんがいらして、“うちのチームぴったりだから”と練習着に買っていかれたこともあります。SPARKはエンターテイメント系の方が たくさんいらっしゃるのですが、ほとんどの 方は一人でそっと入って来て、普通に買っ ていって下さるんです。

 

そして普通に着てく れる。服は着てもらってナンボですから、僕 は名刺代わりにTシャツを配ったりもして います。 ただ、有名人にお金を払って着てもらっ たということは一度もありません。皆さん自分で気に入って好きで着てくれているの で、それはありがたいですね。

 

夏に日本に帰って、人通りの多い原宿、 渋谷、新宿なんかを歩いていると、SPARK のTシャツを着ている人って結構いるんですよね。そういう時は思わず、それ僕がデザインしたんですよって声をかけてしまうんですよ。そこからまたお友達が増えて いって、またハワイに来た時はよろしくお願 いしますという惑じで。やっぱり着てもらっ ていると嬉しいですよね。

 

でもあんまり親しくなると僕のお店で服を買えなくなってしまうんですよね。僕が ちょ っとこれを着てみてと言ってあげちゃうか ら(笑)。 日本で販売しなかったのも良かったんで しょうね。そういう話もたくさんあるのです が、すべてお断りしています。

 

商売がすこく盛り上がっている時って、何か違うお店を 始めたり、いろんな事業をやりますよね?欲が出るというか。"なぜ岩田さんはそれを やらなかったんですか?"とよく聞かれます。 やっばりひとつのことを愛してそれに集中 した方が、高められる僕は思います。

 

手を 広げすぎてしまうと、一番重要なものが愛せなくなってしまうんじゃないかなと。 大企業はそういう風に色んな事業に手 を出して、世界中が不景気になってしまつ たから、後始末に大変じゃないですか。僕 はひとつだけをやっていたので、そんなに 苦しい思いはしなかったです。

 

ほとんどの 古着屋さんは売れ残った在庫処分で大変 な思いをしているんです。幸いうちは回転率が速くて、毎日が買い付けだったんです ょ。古着はカルフォルニアの方で仕入れて くるんですけど、ハワイでも集めようと思えばフリーマーケットやスリフトショップで集められるので、毎日動いていましたね。

 

それを2店舗、3店舗とたくさん店舗を増 やしていくと痛い目にあうのではないかと思います。僕も一時期2店舗出していたん ですが、それはワイキキショッピングプラザ の改装が決まっていたので、移転先として 今の場所を選んで、ほんの数ヶ月だけ2店舗でやっていました。

 

移転の際は、今まで来てくれていたお客 さんたちが、お店がなくなっていたら探さ なければならないので、それにはお金をかけて宣伝しました。JALの機内のCMです とか、日刊サンも使わせて頂きましたが (笑)。日本のテレビ番組『金のA様×銀のA 様』でもたまたま取り上げられで僕の回は“ハワイの古着王”というタイトルになっています(笑)。

 

 

一番の課題は人材育成

常にアンテナを立てていないといけない 商売なので、アンテナが狂った時なんかは 困ります。というのは、忙し過ぎて身動きが 取れないことがあるんですよ。そうすると情報収集ができない。 それから、今一番の課題は良き人材をど のように育てていくかですね。

 

アパレル業っ て人が長く続かないんですよ。発想がマン ネリ化すると困るから、常に新しい人と人 材を代えていくんですね。渋谷のファッショ ンビルの109なんかは、ものすこい勢いで 人材が代わっていきます。人材でファッショ ンセンスをキャッチして、それをデザインに 生かしていくわけです。

 

ですから、何十年も アパレルでやっているという人は、デザイン なんかには関わらない幹部クラスですね。 うちの従業員はほとんどが元お客さんです。どうしても働きたいという人が結構いま すが、パートナーを育てていくにはキツイ 状況ですね。

 

マネージャーもいませんし。バイヤー、経営、デザイン、全部僕がやらなけ ればならないので。特にデザインの部分では、デザイナーが 代わってテイストが変わってしまう可能性 が高い。だからデザインは自分でやってい かなければと思います。 僕は創業者ですから、僕以上に会社のことを考えている人はいない。そこが難しい ですよね。

 

従業員は普通は会社側じゃなく従業員側に固まりますから。昔みたいに会社のために死ねるという人もいないと思い ますし(笑)。かといって昔の人を使うわけ にもいかない。人材は自分で育てていくし かないのかもしれないですね。

 

 

アンティ 一クストリューム待望の復活!

 

アンティークショップ(コレクタブル)をワイキキでやったのは僕が最初だったんですよ。ワイキキにはアンティークのお店は当時一軒も無かった。だから5人入ったら一杯になるような小さいお店でしたが、アンティークを探している人がたくさん来ま したね。

 

ジュ ークボックス、クラ ッシックのパイク、コカコーラの 昔の販売機なんかを置いて、扉 を開けたら1950年代というお 店。それを復活して欲しいとい う人はたくさんいますね。ワイキキにアンティークを扱っているお店はないですか?と聞かれると悔しいですよね、家にあるんですから(笑)。

 

実は今店内に小さいスペースを作ってい て、アンティ一クストリュームを少し復活さ せようかなと計画中です。今はアンティークモールもなくなってしまったので、ワイキキにはそういうお店がない。昔と同じような状態ですね。誰もやっていないから自分でまたやろうかなと。商品はあるので、小出しにしていって。

 

今も自分で直接出かけていって商品を仕入れてきます。僕はネット販売って一度もやったことがないんですよ。やはり自分の 手にとって、触って叩いてみないと気がす まない。コレクターの人って皆そうですよ、 自分の手の平の中で物の良さが分かる。 デザインはまだ眠っているものがたくさ んあります。

 

少しずつ、今がその時期だなと いう時に出していきたいと思います。デザイ ンは財産ですから。デザイナーにお金を出し て作ってもらっただけという軽いものではな いんですよ。マネされるとくやしいなと思うこともありましたが、それが良かったからマネ をしたんだろうなと思うようになりました。

 

 

プライベートな時間は自然だけを見て過ごしたい

今はハワイロア・リッ ジに住んでいます。もの すごく景色が良いとこる で、昼は空と雲と海だけ、 夜は満天の星空。余計な ものはまったく見えな ぃ。仕事で街とか人とか を見ているので、プライ べートな時間は自然だけ を見て過ごしたいなとい うのがあります。

 

自分の 庭でも上の庭でも、いる だけでエネルギ ーが補充できるような所です。ハワイロア・リッジはパワースポットでもあるんですよ。サイキックな人がよく来られ てますから。そういうところで普通に犬の散歩をしたり、ぼ一っとしたり。 家にはショールームを作って、1960年代· 70年代の家具がまわりにバーっとある。そういう環境からデザインを作っています。

 

趣味はたくさんあるんですが、やる暇が ない(笑)。サーフボードもビンテージ物なんかをかなりの数コレクションしているし、 スケートボードも400本以上あるけれど乗 る時間がない。自分の時間は犠牲にしてい ますね、休みもありませんし。ずっとそうい う生活ですね。

 

でもやりたいことが山積み なので仕方ない。寝るのももったいないと思ってしまう。今趣味で出来ていることとい えば、犬の散歩くらいですかね(笑)、その 時間は本当に安らぎますよ。犬を連れて裏山に行って、壮大な景色を眺めていると、自分の悩みなんてちっぽけに思えます。

 

 


岩田正志(いわたまさし)

1967年函館生まれ。大学卒業後沖縄に渡り、軍の仕事の関係 でアメリカへ。カルフォルニア、テキサスを経て 1989年ハワイに。 結婚日の翌日にアンティーク・ストリューム・コ ーポレーションを オープン。その後古羞屋としてSPARKをオープンし、自身でデザ インを手掛けるオリジナルTシャツが評判を呼び、大人気ショッ プとなる。4年前にDFSギャラリア横に移転。2011年にSPARK店内にアンティークアンティークコーナーを復活の予定。


 

 

 

(日刊サン 2011.1.14)

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