青木豊総領事、新任インタビュー 「コロナ禍だからこそ、情報発信をきめ細やかに」
新しい在ホノルル日本国総領事に、青木豊(Aoki Yutaka)氏が着任した。1961年生まれ、東京大学農学部水産学科卒業。カナダ、カンボジア、インドネシア、スイスなどへの赴任歴がある。
家族は妻と二人の息子。趣味は釣りと野球で、高校時代の野球部ではサード、外務省野球部ではピッチャーと強肩で、次男の野球チームのコーチも務めていたという。
身長178cmのすらりとした体躯に、シックなアロハと濃紺のスニーカー姿。公邸の表玄関の外にまで出て、我々を迎えてくれた。
ハワイで初めて私用の携帯を購入、 領事館ツイートで交流しましょう!
「おとといやっとイゲ州知事にお目にかかれました。ご挨拶も早々に、すぐさま日本とハワイの渡航に関する情報交換をしました。日本とハワイでは現在、自己検疫義務が違うので、観光再開に向けてさまざまな協議がされています。この記事が出る頃には、新たな発表があるかもしれないですね」
青木氏がハワイに着いたのが9月23日。日本の総領事はハワイの政財界で重要な存在なので、通常なら早々にハワイ州知事や市議会議長を表敬訪問したり、着任レセプションを開催したりするのだが、コロナ禍の真っ只中の赴任とあって、2週間の自己検疫に。10月7日まで領事館の公邸にこもり、敷地外には一歩も出ず、もっぱらリモート会議で実務レベルの仕事に専念していたという。
「ラジオの電話インタビューなども受けました。そして自己検閲明け後には、マキキ墓地やパールハーバー、日本文化センターなどに行きました。土地勘がないのであちこち車で回って、出雲大社でもお参りし、日系スーパーで買出しもしました」
隔離開け初日には、業務に必要となるアロハシャツを調達したとも。と、突然、総領事は我々に逆質問。 「日刊サンは10月の末で一旦紙媒体の新聞を休刊し、デジタル版のみでニュースや情報を発信されますよね?」
はい、18年前に創刊し、多くの方に愛読していただいた新聞を休刊するのはとても忍びないことで、特にシニアの方はウェブサイトに移行されにくいかもしれないので、思案しております。
「実は私、ハワイに赴任して初めて私用の携帯電話を買いました。役人は公用の携帯電話にツイッターやラインを入れてはいけないのです。でも、ウィズコロナにあって、多くの行事や会合が中止となり、在留邦人の方々、日系人の方々、ハワイの方々と直接会って交流する機会が激減している現状をなんとかしたいと思い、在ホノルル総領事館のツイッターの発信をもっと充実させることにしました」
白いプルメリアがアイコンの、“CGJapanHNL”(Consulate General of Japan Honolulu)でのツイートをよりきめ細やかにする方針だ。
「ところが私は携帯初心者なので、アプリの取り方もQRコードの使い方も何にもわからなくて(笑)。だから日刊サンも、デジタル版を読むためのQRコードのアクセス方法などは、シニアの方でもわかるよう、ていねいに紹介した方がいいですよ」
青木総領事、読者目線でのアドバイス、ありがとう存じます!
「最近の総領事館ツイートは、出雲大社でコロナの収束を願って、“二礼四拍手一礼”で参拝したことや、イゲ州知事を表敬訪問したことなどをアップしました。懇談の内容など、どこまで公開するか……身近で役立つ情報をツイートしていきます。皆さんぜひ、“いいね♥”をお願いします!」
水産学科卒業が外交官に?! 魚の外交は広くて深〜いんです
ところで水産学科卒業の外交官って、珍しくないですか?
「この質問、よく聞かれます。外務省に“経済局漁業室”という部署があるのも知らなかった、とかね。魚は200カイリなんて国境を気にせずに自由に泳ぎ回る、インターナショナルな資源です。漁業権や資源保護、安定的で持続可能な漁獲など、国際間で話し合う課題は多いです。外務省は水産庁と協力しながら、漁業に関する国際的な案件に取り組んでいます」
青木総領事は海に面した神奈川県の藤沢で生まれ育った、湘南ボーイだ。小さな頃から釣りが好きだった。 「東大の理2に入って学部の進路を決める時、釣りが好きだから水産学科かなあって(笑)。資源学を専攻し、産卵や回遊、魚の群れごとの漁獲など、資源解析を学びました」
国際的な知識なしに資源解析は学べないので、外務省の漁業室では重責を果たした。
「昔、外務省は3年に一人、水産学を専攻した者を採用していたので、ちょうどその年に当たっただけです(笑)」
太平洋のど真ん中にあるハワイで、お好きな釣りが楽しめそうですね。 「いやいや、釣りなどの時間がかかる趣味は難しいんじゃないかな。日本との時差の関係で、ハワイ時間の木曜日には日本との仕事を終わらせて、また日曜日には仕事を始めければなりません。まだ時差の感覚に慣れていないんです」
着任後一度も、海に入っていないという。
「足も浸けていないんですよ。ハワイの海には思い出があります。外務省に入って、初めての赴任先がカナダのオタワでした。結婚直後で新婚旅行もしないまま、すぐに赴任して3年半過ごしました。その間に長男が生まれて、日本への直行便はなかったので、休暇で日本に帰国する際にハワイに寄りました。長男にとって、初めて浸かった海が、ワイキキの海です。あれから25年、長男はすでに社会人で、次男は大学生です」
日本とハワイは相思相愛、 新しい観光のありようも進行中
「海も山も緑も風も、美しい自然に囲まれ、アロハの心を持つ人々が暮らすハワイは、多くの日本人にとって大好きな憧れの地です。昨年は約158万人もの日本人が訪れました。地理的には日本とアメリカ本土を隔てる太平洋に、架け橋のように位置し、1868年にまで遡る日本人移民の長い歴史もあります。日系人の方々の経験された試練と活躍、真珠湾から始まった太平洋戦争の悲劇を経て、現在は大切なパートナーとなっています。ハワイの人にとっても日本人は、最も重要な歓迎すべきゲストです。相思相愛、だからウィズコロナにあっての観光再開に向けて、政府民間の関係者が慎重な議論を深めつつ前進しています。安全に早く観光再開をしたいという思いは一致しているので、私たち総領事館のスタッフも全力を尽くしてサポートしています」
ニューノーマル、ウィズコロナにあっての、新たなハワイ観光の模索について。 「観光客がいなくなり、ウミガメの産卵が増えたり、海の透明度が増したりするニュースをよく耳にします。これからのハワイ観光は、自然環境を尊重したツアーや、体験型のコミュニティなど、変わっていくべき点もあると思います。ハワイならではの価値ある、新しい観光ブランドが生まれてくることを期待します」
在ホノルル総領事館としての対応は?
「コロナに関する安全情報の最新の問い合わせが増えています。日本側の情報は責任を持ってアップデートできますが、アメリカやカナダ、その他の国の措置については、確認している範囲でお伝えしています。在留届を出していただければ、安全情報の更新をメールでお知らせしています。何かあった時の安否確認もバックアップできますので、ぜひ登録をしてください」
また日本からハワイへ、ハワイから諸外国に海外旅行をする際は、“旅レジ”への登録も役立つので利用してほしいとも。 「私の場合、ジュネーブに赴任していた時、アイスランド旅行の前に旅レジに登録しました。そうしたら、旅先でマラソン大会があり、交通機関で使えない乗り物があることや、夜には大きな花火大会が開催されることが事前に分かり、リアルな旅の計画にとても役立ちました」
あんなことこんなこと、日系人や在留邦人の方々の意見や要望にも応えていきたい。
「日系団体や在住者の親睦会、商工会、各種学校など、できるだけ多くの方と交流できるよう、オンラインなども活用して双方向で触れ合える場を作りたいです。利用のしがいがある領事館でありますよう、全力で働かせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします」
(取材・文 奥山夏実)
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(在留届や旅レジは、ウェブサイトからでも登録できます)