左利きのフォアハンドから繰り出される力強いショットが持ち味。 日本屈指のパワープレイを魅せる女子テニスプレーヤーのひとり、土居美咲選手に、12月に行われた2019ハワイオープン・テニスの会場で独占取材。その模様をお届けします。
日刊サン 試合お疲れさまでした。よろしくお願いいたします。土居選手のツイッターによると、KHONをはじめ、現地のニュース番組にテレビ出演して、とても緊張した、と書かれていらっしゃいました。
土居選手 英語だったのでめちゃくちゃ緊張しました。英語のインタビューがいちばん緊張するんです…。
日刊サン 試合よりですか?
土居選手 はい、英語のインタビューのほうが緊張しました。試合はいつものことなので慣れていますから。
日刊サン 試合前は緊張しないのでしょうか?
土居選手 試合でももちろんするんですけど、それが仕事なんで、いつもやってることのひとつですからね。でも、英語のインタビューは自分の苦手なことの一つなんです。とても緊張しました。
日刊サン 6歳からテニスを始めたということですが、きっかけはなんだったのですか?
土居選手 両親が趣味でテニスをやっていたのです。最初親がやっているところに私がついて行って、親がテニス終わるまで見ているうちに私もやりたいって思って。近くにある壁打ちで練習をはじめました。そのときはまだ小学校に上がる前だったと思うのですが、99までは数えることはできたのです。1、2、3って数えられるのですが、100以上になると小さかったから数え方がわからない。それで、また1からの繰り返しだったそうです。(自分では覚えてないのですが)それを後から聞いて。だから99までは壁打ちはできたみたいです。
日刊サン でも99回連続で続けるというのも、その年齢だととても難しいと思うのです。すごいですね、そのときからプロの片鱗が見えていたというか。
土居選手 いえいえ。笑
日刊サン 6歳からテニスをはじめて、どの段階でプロを目指すようになったのでしょうか。
土居選手 14、15歳のときにグランドスラム・ジュニアの大会に出るようになって、そのあたりから明確にプロになって(この場に)戻ってきたいと思ったと思います。
日刊サン 初めての海外大会はどこでしたか?
土居選手 どこだったかなぁ…。小学校5年生の頃にアメリカに初めて遠征に行ったと思うのです。自分の(所属する)千葉のテニスクラブの海外遠征だったと思います。
日刊サン 勝負というより、どちらかというと楽しい感じですか?
土居選手 はい、わいわいと楽しかったですね。
土居美咲選手は6歳から壁打ちテニスを始め、中学生の全国テニス選手権で2度ベスト4に進出。
ジュニア時代は奈良くるみ選手とダブルスを組み、数々の実績を残している。
2007年のウィンブルドン・ジュニアや全豪オープン・ジュニアでは準優勝。その名を世界にとどろかせた。日本国内において18歳以下のジュニアシングルス・ランキング3位となり、名実ともに日本ジュニアのトッププレイヤーとしてプロへの道のりを駆け上がり、2008年12月17歳8か月でプロ転向。
159センチの身長はプロテニスプレーヤーとしては小柄だが、そのプレーぶりは力強く、破壊力と躍動感に溢れている。最大の武器は左利きのフォアハンドから繰り出される鋭く切れ味の良いパワーショット。ハワイオープンでは残念ながら決勝に進むことができなかったが、会場のハワイ大学スタン・シェリフ・センターではこのパワーショットを何度も決めていた。大勢が見守る中、コートを弾けるように飛び跳ねる小柄な日本人は、観客やメディアに多大なインパクトを残していた。
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日刊サン 小さいお子様がテニスをやっていると、勉強とテニスの両立ってとても難しいと思うのですが土居選手はどのようにしていましたか?
土居選手 中学2年生のころから、年の半分ぐらいを遠征に出るようになって。学校の勉強についていくのも大変でした。2~3週間遠征で出てしまうと、(授業の)間があいちゃうので、戻ってきたときに先生が何言ってるんだろう?? ってぽかーんってなってしまう。だから、ホテルでも必死に勉強しました。授業にまったくついていけなくなってしまうので。 先生から見たら(私が)どれだけできていたからはちょっとわからないですけれど、自分なりには必死にやっていました。
日刊サン 食べ物を管理するよう言われると、毎食栄養士に写真を送ったとか。とてもまじめな性格ということですが。
土居選手 まじめなのかなぁ。人に言われたことはやるタイプです。めっちゃ人に言われたことはちゃんとやるけれど、言われない限りは自らはやらないタイプですね。
日刊サン ハワイにはこれまで何回ぐらい来られたのでしょうか?
土居選手 数えてみたんですけど、たぶん4回で。1回目は4歳ぐらいのときに旅行で家族で。あと、おととしと去年は大会できて、で、今回ですね。
日刊サン 試合で来るとビーチとかは行くことができるのでしょうか? プライベートの時間は取れるのですか?
土居選手 そうなんですよね。ハワイには来たものの、なかなかビーチには行けず。(目を輝かせながら)でも、今回は結構ビーチに行きました。2回ほど。夕方の4時ぐらいから。一応練習はしているので(笑)あたりまえだけど。練習が終わったあと、時間が遅く4時とか5時とかになってしまいましたけど、ハワイを満喫したいから、日が陰ってきちゃったけど「行こう!」って。1回目がワイキキビーチで。2回目が、どこなんだろう?? ショッピングセンターの前の、テニスコートのある(アラモアナ)ビーチに行きました。魚を見つけて泳いで、追いかけて。子どものころにスイミングもやっていたので、泳ぐのは好きなのです。
日刊サン 趣味というか、好きなことはなんですか?
土居選手 趣味…、聞かれると困るんです。これというのがわからないんですよね。(ジャニーズの)「嵐」は好きです。それ以外は、動画を見たり。テニスの待ち時間が結構あるので、動画見たり映画見たりは好きです。Youtubeを見たりしていますね。
日刊サン もしテニス選手でなかったらなにになっていますか?
土居選手 子どもが好きなんです。おばあちゃんが園長さんなので、そういうのになっていたりするのかなあ。もしかしたら子どもに関わることで、保育士さんですかね。でなければ、スポーツ系なにかやっているかも。動くのやっぱり好きだし、サポートすることとかかな。
日刊サン ご両親は本格的にテニスをやっていらっしゃったのですか?
土居選手 いえ、部活とか程度です。ぜんぜん普通の家庭です。私がプロ選手になったのは土居家の一大ニュースだったと思います。ふつうはスポーツ選手がご家族にいたり、親とかがオリンピック選手だった、とか聞きますけれど、私はぜんぜんそういうのはなくて、普通に趣味のレベルの親です。たまたま運が良かったんだと思います。
日刊サン 2017年は調子が良くなかったと思うのですが、また突然ランキングが上がってきた。それを乗り越えたのは、どのように復活したのでしょうか?
土居選手 記事的に言ったらなにか本当に、ひとつのできごとがあって変わったってなると思うのですが、なにもなく地道な話というか、徐々に徐々にです。(かみ合わず)難しいところから、ITFのチャレンジャーとかもたくさん回ったりして。すこしなんていうんですかね、今まで出ていた景色と違う大会に出てみたりして、そんな中でも腐らずに自分のできることをやっていけばいいかな、と思い始めて。すこしずつ結果どうこうより、テニスの楽しさがわかってきて、という感じです。
日刊サン 2020年の目標をお聞かせください。
土居選手 2020年はオリンピックがあります。私の中ではいちばん重きを置いていて、現役での目標でもあります。なかなか選手人生の中で、現役の中で東京で開催されることがないですからね。一番大きな目標に置いています。
日刊サン オリンピック出場、期待しています! ありがとうございました。
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試合中にショットを決めると右手でこぶしを挙げて小さくガッツポーズ。荒ぶる感情や躍動感、力強さをコート上で見せる土居選手。試合後のアイシングをした状態でのインタビューでは、その姿を微塵も見せずとても謙虚で、ときにはくりくりと丸い瞳をさらに大きく輝かせ、ひとつひとつの問いに丁寧に答えてくれる。小動物のようでかわいらしい。試合後には気さくに観客のサインに応じ、ボランティアの子どもたちとの記念写真にも笑顔で収まる。プレー中のアグレッシブなフォアハンドストロークからは想像がつかないキュートさが土居美咲選手の魅力でもある。
写真協力:Misaki Doi Official Twitter @MisakiDoiTennis
(取材・文 鶴丸貴敏)
(日刊サン 2020.1.25)
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土居美咲 Misaki Doi (所属:ミキハウス) WTAツアー最高位:世界ランキングシングルス30位、ダブルス78位。 1991年4月29日生まれ 身長:159㎝ WTAツアー:シングルスで1勝(2015年BGLルクセンブルク・オープン)、ダブルスで2勝(2014年イスタンブール・カップ、2019年ジャパン女子オープンテニス)。 WTA125シリーズ:シングルス2勝、ダブルス3勝