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デジタル版・新聞

インタビュー

玉子屋会長 菅原勇継さん

言われたことだけやっていてもつまらない

富士銀行では五反田支店に配属にな り、集金から窓口からなんでもやりました。 五反田は映画館と風呂屋が多く、集金する と小銭ばかりなので重いんです。私が採用 されたのは力があるからだったのかもしれ ないですね(笑)。

 

野球部を作ったり、卓球台を買ってもらったり、社交ダンス教室を 開いてもらったり、仕事以外でも色々なことをやりました。言われたことだけやっていても楽しくないでしょう? 仕事は面臼くな くちゃ。

 

私は新しいことを率先してやっていきました。思ったことは何でも言ってしまう私のようなタイプは、銀行にはまったくいな かったので、逆に皆から喜ばれましたね。

 

先輩や支店長が毎晩のように飲みに連れて行ってくれて、かわいがって頂きました。 銀行での4年間はものすごく勉強になり ました。東大出のエリートとも物怖じしな いで互角に話すことができるようになりま したし。出過ぎた杭は必ず成功するんですよ(笑)。

 

でもね、4年以上やると銀行員が染み付いて抜けられなくなってしまうと感じ ました。それで当初の予定通り4年できっばりと銀行を辞めることにしました。 当時、友人が魚屋をやっていて、面臼そうだったので手伝うことにしました。一緒に 仕入れに行き、魚の見方を覚えていきました。

 

しばらく友人を手伝った後に、大森の 宝市場というマーケットでスペースを借り て自分で魚屋を始めたとこる、これが大成 功。普通の魚屋とは全然違う発想でしたから、それが良かったんでしょうね。

 

例えば、 今日は寒いなと思ったら鍋の材料をドカッと仕入れてきて、どこよりも安く売る。普通 の魚屋のように色々な種類を置かないで、 今日はサバの日とか、今日はマグロの日とかをこちらで決めて、それを大量に仕入れて安く売る。そんなわけで、魚屋は23歳から15年くらいやりました。

 

 

ふとしたきっかけでオフイス街に弁当を配達することを思いっき玉子屋が誕生

魚屋は順調に成長していましたが、「自 分で割烹店を作れば自分の店で飲めるな」と思い立ち、割烹とトンカツの店を始める ことにしました。

 

赤坂の超一流の料亭で働いていた板前をスカウトして、夜は割烹で、 昼はトンカツ屋という形態です。板前の腕も良かったし、魚屋の経験があったので良 い素材の仕入れ方も分かっていたのであ っという間に人気の店になりました。15席 <らいの小さなお店で、昼はすぐにいっぱいになってしまいます。

 

ある時銀座の町エ場から「お宅はいっでもお客さんでいっぱいで食べられないから、15人分弁当を作って持ってきてよ」と頼まれました。トンカツ弁当を風呂敷に包んで持って行くときにひらめきました。

 

「ちよっと待てよ、お客様を店で待っているだけなら15人だけど、弁当なら100個でも200個でも売れるじゃないか」ということ に気がついた。さっそく今までの銀行や高 校時代の人脈を使って営業を開始しました。

 

弁当屋の同業者はた<さんあったけれ ど、当時はオフィス街に配達している会社 は全然なかったんです。自分自身が銀行に 勤めていた頃、配達してくれる弁当屋なんてなかったのでいつも困っていたことを思い出しました。弁当屋と言えば一般的には 工事現場が主な顧客という時代です。

 

人脈やロコミのおかげで、あっという間 に丸の内などのオフィス街でお客様を獲得しました。これが玉子屋の始まりです。

 

 

1人5役をこなす玉子屋の組織力

どうしてこんなに美味しい弁当をこんな 値段で出せるのですかとよく尋ねられます。玉子屋の弁当は現在430 円。原価は53 %、しかも廃棄率は0.1%を達成していま す。

 

弁当に53%というのはかけ過ぎと思われるかもしれませんが、利益がきちんと出ています。なぜそんなことができるのかというと、玉子屋の従業員は1人で5役をこなしているからなんです。

 

玉子屋では配達をす る人が営業も担当しています。「営業」だけという仕事はありません。 玉子屋は21の班組織から成り立ってい ます。1班に約10人、1班の売上は年間3億円に達します。

 

それぞれの班の班長が、従 業員の募集・ 採用や営業戦略などすべてを 決める権限を持っているので、班長はいわば社長のような存在です。班長以外の従業 員が班長を選出します。

 

実は従業員の中に は学歴社会に馴染めずドロップアウトしてしまったような 「元悪ガキ」が多いんです。根は優秀なやつらですから、少しやる気を 刺激するだけで彼らは実によく働いてくれ るんですよ。

 

玉子屋は約5000社の企業に1日7万食 の弁当を配達しています。朝10時半までに 受けた注文を、何があっても必ず12時までに配達しないとお金を頂けないので、配達部隊の連携・人間力が非常に重要になりま す。

 

渋滞の時は連絡を取り合ってすいてい る道を選ぶ、弁当が足りない車は余ってい る車と落ち合って融通する。アメリカの大 学から視察に来るのですが、「このやり方は アメリカでは出来ない」と言っています。

 

コンピューターのマスゲームならば可能です が、実際の人間の判断で天気や渋滞など をすべて予想することは不可能なんです。 大企業が何度も玉子屋の方法を試しているようですが、やっぱりできないんですね。

 

知恵のある悪ガキたちと一緒に考えな がらやっているうちに、自然とこういうシス テムが出来上がったんです。

 

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